最新記事
リーダーシップ

「嫌われようが使命を果たす覚悟」...泉房穂・前明石市長が語った「社会の変え方」

2023年7月6日(木)17時24分
flier編集部

230704fl_ifs03.jpg

平時は調整型リーダーが求められるけれど、変革期には方針転換の決断力が求められる。この変革期こそ自分の得意なリーダーシップを発揮できると考えました。市長をめざしたのは、ダイレクトに市民のための意思決定ができる権限をもてるというのが大きかった。特に私の得意分野はゼロイチの部分だから、大きな方針転換をはかり、戦略を具体化するところに焦点をあてました。

政治に関するリーダーシップ論でいうと、政治で求められるのは結果責任。つまり、いくら頑張っても失敗は許されないんですよ。政治とは、国民や市民の不安を解消し、幸せを届ける仕事。だから、目標の達成に向けて合理的な判断を積み重ねることが必要で、「一か八かのチャレンジ」なんてあり得ない。そういう意味では、明石市は全国初の政策を数多く打ち出してきたけれど、1つもこけていない。こけないように石橋を叩いて叩いて割れそうになるくらい、慎重に、周到に準備してきたんです。

──具体的にどんな点を意識しましたか。

2種類あって、1つは他の国や市で成功した事例を明石に合うようにアレンジすること。2つめは現場に行って、市民のニーズを把握することです。常にアンテナを立てて、情報収集をし、時代を読んできました。

時代を読んでできた政策の一例は、2023年度から明石市独自に、児童手当を高校生世代まで拡充したこと。数年前からの構想でしたが、東京で追随する動きがあるだろうし、2、3年後には国が動くから財政面は問題ないと読んでいたんです。

凧揚げって風が吹かないと飛ばないですよね。それと同じように、政治もいかに風を読むかが大事。たとえば、LGBTQ+の政策も早くからやりたいと思っていました。2015年に渋谷区や世田谷区で同性パートナーシップが制度化され、明石でも始めるタイミングを見計らっていたんです。2019年秋に明石でもレインボーパレードが開催され、そのとき市民の手を振る様子を見て、「ついにタイミングが来た」と思いました。

やるからには当事者のニーズに沿った実効性のある制度にしたい。全国公募でLGBTQ+の第一人者たちを集めてアドバイザーに就任してもらい、彼らのやりたいことや課題意識を掘り下げていきました。すると、たくさんの不便が起きていることがわかった。異性同士で結婚して子どもを授かっていたAさんが、その後同性のBさんとパートナーになっても、Aさんの子どもとBさんの親子関係が認められなければ、保育園のお迎えで親として扱ってもらえないというのです。そこで、全国で初めて、パートナーと一緒に暮らす子どもも合わせて関係性を証明する「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を開始することになりました。

こんなふうに、明石で受け入れられるタイミングを読みながら、詳しい当事者たちの知恵を形にしていきました。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、自動車関税の影響軽減へ 29日実施=米

ビジネス

アングル:欧州中小企業は対米投資に疑念、政策二転三

ワールド

カイロでのガザ停戦交渉に「大きな進展」=治安筋

ビジネス

NY外為市場=ドル全面安、週内の米指標に注目
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 8
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中