日本企業の「人材を評価する」能力が低い訳...敏腕ヘッドハンターが教える「人を見る目」の鍛え方とは?
大賀:人を見る目を集合知として蓄積し、活かしている手本のような会社はありますか。
小野:リクルートはこの分野ではダントツではないでしょうか。日本企業では唯一「世界選手権」で戦える会社だと思っています。同社は、創業時から心理学を経営に取り入れ、人の研究開発機関をもつ会社でもあります。トップから末端の社員まで、会社全体で「人を見る目」を鍛える仕組みがインストールされていました。
「Aさんを抜擢したほうがいい」「Bさんは〇〇の力が足りない」などと、かなり踏み込んだ議論がなされると聞きます。社員の変化を定点観測し、その言語化を迫られる。そうするうちに評価もフェアになるし、「こういう人は伸びる」といった知見が蓄積されています。
大賀:トップだけでなく全社員が「人を見る目」を日常的に鍛えているのがポイントなのですね。
急成長をめざしたいが、「優秀だが有害な人」を雇うべき?
大賀:ご著書では、「優秀だが有害な人」をいかに見抜くかという内容が紹介されていて興味深かったです。
小野:「人としての優秀さ(優秀・平凡)」を縦軸に、「人としての善悪(有害・無害)」を横軸にとると、人を分類する4象限が生まれます。このうち「平凡で有害な人」は、その有害さを隠す狡猾さがないため、対応は比較的容易です。
厄介なのは「優秀で有害な人」です。彼らはめざましい実績を出すため重要なポジションに抜擢されやすいものの、周囲に悪影響を及ぼします。時には組織崩壊を引き起こしさえします。
大賀:幹部クラスの登用では、まさに経営者の「人を見る目」が問われますね。同僚の立場だと、「優秀で有害な人」は避けたい。けれど、企業としてはこの人のおかげで業績が伸びているとなると、ポジションから外したり辞めさせたりする判断が遅れてしまう。そういう人を雇い続けるべきかという悩みを抱えている経営者は多いと思います。
小野:経営者の立場に立つと、自社の成長を加速させるため、有害でも成果を出す人が欲しくなることも分かります。事実、急成長を果たしたメガベンチャーには、そういった人たちが居たことが多いです。ある意味で必要悪と言えなくもない。
ポイントは、こうした人物を組織のカルチャーの多様性として受け入れるのかどうかです。誰を信じて任せるか、誰を登用するか。こうした「人」の世界は正解がないだけに、経営層の多くが悩むところでもあります。