最新記事
人材

日本企業の「人材を評価する」能力が低い訳...敏腕ヘッドハンターが教える「人を見る目」の鍛え方とは?

2023年5月18日(木)19時04分
flier編集部

人間の本質を「構造」で捉えることで、もっとシステマチックに採用の判断ができるのではないか。そう考えて、本書では、人を4つの階層で捉えるフレームワークを紹介しました。地上1階が「経験・知識・スキル」、地下1階が「コンピテンシー」、地下2階が「ポテンシャル」、そして最下層の地下3階が「ソース・オブ・エナジー」です。

地上に出ている「経験・知識・スキル」はわかりやすく、ほとんどの面接ではこの表層部分においての分かりやすい連想ゲームでアリ、ナシを判断しています。しかし、地下部分を見ることができると、もっと本質的な連想ゲームができ、経験は当初不足していたけれども、やってみたら大活躍する。という候補者を見出すことができるようになります。

230513fl_oec01.jpg

人を選ぶ技術
 著者:小野壮彦
 出版社:フォレスト出版
 要約を読む
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

230511fl_tei04.png

大賀:人を見る目は後天的に身につけられる、鍛えられるという言葉に勇気づけられましたし、特にポテンシャルの4つの因子には、なるほどと思いました。

小野:ポテンシャル・モデルは、エゴンゼンダーが人の「器」に着目し、ハーバード大学などとともにリサーチを積んで開発したコンセプトです。人の器の大きさや伸びしろは、「好奇心」「洞察力」「共鳴力」「胆力」の4つの因子で測ることができます。便宜上、「~力」という言葉を使っていますが、これは「能力」ではなく「エネルギー」のようなもの。対話をするなかで、その人の言葉だけでなく、顔つき、表情、声のトーンなどから「感じ取って」いくものだというのがポイントです。

そして、最下層にあるソース・オブ・エナジーは、使命感と劣等感から構成されるものです。劣等感というとネガティブな意味に使われることが多いですが、人の成長や発展の源泉という観点ではプラスに働くものだと捉えています。

圧倒的に「人を見る目」を鍛えているのは、あの人材輩出企業

大賀:人を見る目を鍛えるために効果的なトレーニング方法はありますか。

小野:詳しくは企業秘密になりますが(笑)、これはスポーツのようなものです。正しいフォームを身につけること。それと、自分のプレーを見直して、フィードバックを回し続けることが大切です。

テニスが上手くなりたいと思ったら映像を撮って見直すでしょうし、仲間やコーチにアドバイスを求めますよね。それと同様に、面接官同士で、候補者への評価を話し合うことはおすすめです。「なぜこの人がいいと思ったのか」「なぜ違和感を覚えたのか」など、他者に説明することで、解像度が上がってゆく。さらには、同僚や上司の意見を聞くことで、お互いの偏向性や先入観(バイアス)に気付いたりします。

私が参画しているグロービス・キャピタル・パートナーズでも、投資先のスタートアップに、採用評価委員会の設置をすすめています。オファーを出すか、最終判断をする前に、その候補者を面接した人たちが集まって、大いに議論をするのです。候補者1名あたり10分程度でいいかもしれません。そうすれば、他者からのフィードバックや検証を通じた学び合いが起こり、それが人選びの集合知として組織に蓄積されるのです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中