日本企業の「人材を評価する」能力が低い訳...敏腕ヘッドハンターが教える「人を見る目」の鍛え方とは?
人間の本質を「構造」で捉えることで、もっとシステマチックに採用の判断ができるのではないか。そう考えて、本書では、人を4つの階層で捉えるフレームワークを紹介しました。地上1階が「経験・知識・スキル」、地下1階が「コンピテンシー」、地下2階が「ポテンシャル」、そして最下層の地下3階が「ソース・オブ・エナジー」です。
地上に出ている「経験・知識・スキル」はわかりやすく、ほとんどの面接ではこの表層部分においての分かりやすい連想ゲームでアリ、ナシを判断しています。しかし、地下部分を見ることができると、もっと本質的な連想ゲームができ、経験は当初不足していたけれども、やってみたら大活躍する。という候補者を見出すことができるようになります。
『人を選ぶ技術』
著者:小野壮彦
出版社:フォレスト出版
要約を読む
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大賀:人を見る目は後天的に身につけられる、鍛えられるという言葉に勇気づけられましたし、特にポテンシャルの4つの因子には、なるほどと思いました。
小野:ポテンシャル・モデルは、エゴンゼンダーが人の「器」に着目し、ハーバード大学などとともにリサーチを積んで開発したコンセプトです。人の器の大きさや伸びしろは、「好奇心」「洞察力」「共鳴力」「胆力」の4つの因子で測ることができます。便宜上、「~力」という言葉を使っていますが、これは「能力」ではなく「エネルギー」のようなもの。対話をするなかで、その人の言葉だけでなく、顔つき、表情、声のトーンなどから「感じ取って」いくものだというのがポイントです。
そして、最下層にあるソース・オブ・エナジーは、使命感と劣等感から構成されるものです。劣等感というとネガティブな意味に使われることが多いですが、人の成長や発展の源泉という観点ではプラスに働くものだと捉えています。
圧倒的に「人を見る目」を鍛えているのは、あの人材輩出企業
大賀:人を見る目を鍛えるために効果的なトレーニング方法はありますか。
小野:詳しくは企業秘密になりますが(笑)、これはスポーツのようなものです。正しいフォームを身につけること。それと、自分のプレーを見直して、フィードバックを回し続けることが大切です。
テニスが上手くなりたいと思ったら映像を撮って見直すでしょうし、仲間やコーチにアドバイスを求めますよね。それと同様に、面接官同士で、候補者への評価を話し合うことはおすすめです。「なぜこの人がいいと思ったのか」「なぜ違和感を覚えたのか」など、他者に説明することで、解像度が上がってゆく。さらには、同僚や上司の意見を聞くことで、お互いの偏向性や先入観(バイアス)に気付いたりします。
私が参画しているグロービス・キャピタル・パートナーズでも、投資先のスタートアップに、採用評価委員会の設置をすすめています。オファーを出すか、最終判断をする前に、その候補者を面接した人たちが集まって、大いに議論をするのです。候補者1名あたり10分程度でいいかもしれません。そうすれば、他者からのフィードバックや検証を通じた学び合いが起こり、それが人選びの集合知として組織に蓄積されるのです。