日本企業の「人材を評価する」能力が低い訳...敏腕ヘッドハンターが教える「人を見る目」の鍛え方とは?
大賀:フライヤーももちろん成長を急ぎたいですが、もし「優秀で有害な人」が入社しても、組織のカルチャーの自浄作用が働いて、組織に定着しないように思います。「優秀で有害な人」の助けを借りなくても、既存のメンバーの創意工夫によって、成長を最大化できるのではないかと考えています。
小野:そこは企業のビジネスモデルでカバーできるところでもあります。営業力に依存しない仕組みを作るとか、競争を挑むのではなく、自社独自の価値を提供するオンリーワン戦略をとるとか。
大賀:ここは経営者の美学にもよりますね。5年、10年と長いスパンでの組織としての最適解を探りたいところです。
ポテンシャルは後天的に伸ばせるのか?
大賀:ご著書の「人を4つの階層で捉えるフレームワーク」は、選ぶ会社側の目線だけでなく、選ばれる個人の目線でも興味深く、自身の人間性を高めていくうえでも重要なものだと思います。ポテンシャルを後天的に伸ばすことは可能ですか。
小野:ポテンシャルの大部分は5、6歳の頃に決まるので、後から伸ばすことは難しいという立場をとっています。ですが、意外に「自身のポテンシャルに気づけていない」「ポテンシャルがあるのに開花していない」というケースが多くあります。
1つめのケースは、正しい自己認識ができていないケースです。たとえば、他者から見ると、十分好奇心はあるのに、本人はそうでないと思い込んでいるとか。そうした誤解を解くことで、リミッターがはずれて本来のポテンシャルが活かせるようになります。
もう1つのケースは、ポテンシャルの開花のチャンスを得られていないケースです。たとえば、趣味ではアイディアに満ち溢れているのに、職場ではそういった創意工夫はむしろマイナスとなるようなケースです。環境がポテンシャルの発揮を阻害しているようなこともあるのです。
大賀:なるほど。個人としては、固定観念にとらわれず自分のポテンシャルを解放することが大事になる。それに対して組織の役割は、個々人のポテンシャルを開花させるような環境を整えることだと思いました。人の能力を伸ばすというとおこがましい感じもしますが、「その人本来のポテンシャルを発揮してもらう」と考えると自然にできそうですね。そうした環境整備のためにも、『人を選ぶ技術』を改めて振り返りたいと思います。
小野壮彦(おの たけひこ)
グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター
起業家・ヘッドハンター・経営者メンター
1973年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、アクセンチュア戦略チームを経て、1999年にネットエイジの支援を受け、インターネット上の企業間仲介サービスを提供するプロトレードを創業。翌年楽天に買収され、三木谷社長の経営企画スタッフとして薫陶を受ける。ミラノ・ボッコーニ経営大学院にてMBAを取得し、31歳でJリーグ・ヴィッセル神戸の取締役事業本部長に就任。クラブ経営、チーム強化に従事する。その後プロ経営者を目指し、リヴァンプを経てベンチャー企業の役員を経験。コンサルタント、起業家の二面の経験を買われ、2008年、35歳で世界最高峰のエグゼクティブサーチファーム(ハイレベル経営層のヘッドハンター)であるエゴンゼンダー社に入社。ヘッドハンティング、アセスメント、コーチングを100社以上の企業、約5000人の経営人材へ実施。2016年同社の共同経営者(パートナー)に就任。2017年に前澤友作社長にスカウトされ、ZOZOに参画。本部長に就任。ZOZOスーツの立ち上げ、海外72か国へのグローバル展開を指揮。現在は日本最大級のベンチャーキャピタルファンドであるグロービス・キャピタル・パートナーズにて、組織グロースの支援、起業家メンタリングなどにあたりつつ、自身のスポーツマネジメント会社を経営中。
flier編集部
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