評価される文章とは? 文章力より「それ以外の方が重要」な理由について
とくに若いころから書くことが好きで、書く仕事に憧れてきた人ほど、ライターという仕事を神格化してしまいがちだと感じます。
私は、ライターは選ばれしものにしかできない、特別な職業だとは思っていません。多くの他の職業同様、実践を経験しながら少しずつライター「らしく」なっていけばいいし、ライターに必要なのは、才能ではなく技術です。
言い換えれば、私たちはアーティストである必要はなく、私たちが目指すべきは専門技術を持ったビジネスパーソンです。
では、ライターであるために必要な専門技術とは何か。それを話す前に、ライターとはどんな仕事なのか、この本におけるライターの定義をしたいと思います。
ライターとは、日本語を日本語に翻訳する仕事
同じ「書く仕事」ですが、ライターの仕事とコラムニストやエッセイストの仕事はだいぶ違います。たとえて言うなら、お洋服のスタイリストとデザイナーくらい違う。スタイリストは、すでにある服やアクセサリーを組み合わせてコーディネートを作る人。デザイナーは服やアクセサリーそのものを作る人。まったく違う仕事です。
同じように、ライターとコラムニストやエッセイストは、職能がかなり違います。ライターは人から受け取った素材を元に、その人の意見で原稿を作る人。コラムニストやエッセイストは、素材そのものを自分で調達し、自分の意見を中心に原稿を作る人という感じでしょうか。この2つは、かなり大きな違いです。
同じ「書く仕事」のなかで、ライターの職業に一番近いのは、翻訳家だと私は思っています。とくにインタビュー原稿や書籍の原稿においては、求められている職能がとても似ていると感じる面が多々あります。
翻訳家は、たとえば英語を日本語に翻訳したり、日本語をフランス語に翻訳する仕事ですよね。それと同じように、ライターは日本語を日本語に翻訳する仕事です。