斜陽デトロイトは「デジタル」で蘇る──先端技術の集積拠点として台頭
MICHIGAN MOVES UP
「より安全で、より平等で、より環境面で健全な輸送手段を全ての住民に提供することにより、州経済をより強力なものにできると、州知事と業界のリーダーたちは確信している」と、ポールは言う。
ミシガン州のグレッチェン・ウィトマー知事は昨年9月、その目的を達成するための「ミシガン未来モビリティ計画」を発表した。この計画は3つの柱で構成される。
1つは、モビリティ産業の雇用を大幅に増やすこと。2つ目は、より安全で、より環境に優しく、よりアクセスしやすい交通インフラを提供すること。そして3つ目は、モビリティと電動化に関するイノベーションとその支援策で世界の先頭を走り続けることだ。
未来のクルマの中核技術
アメリカの自動車メーカーだけがミシガン州で自動車関連のテクノロジー開発に投資しているわけではない。ミシガン州に進出して半世紀以上の歴史を持つ日本のトヨタ自動車は、自動運転車やコネクテッドカーの走行試験場を運営する非営利団体「アメリカン・センター・フォー・モビリティ(ACM)」の創設時から資金を拠出している。
ミシガン州イプシランティにあるACMの試験場には数キロにわたる試験走路が設けられており、5車線4方向のインターチェンジや、高速道路の出入り口なども用意されている。トヨタはACMに対して、17年に500万ドル、21年に600万ドルを拠出している。
ミシガン州では、次世代道路インフラの開発を手がけるキャブニュー社と州政府の協力により、州内のデトロイトとアナーバーを結ぶ高速道路に自動運転車とコネクテッドカーの専用車線を造る計画もある。この次世代道路により、アナーバーにあるミシガン大学のキャンパスと、デトロイト・メトロポリタン空港、デトロイトのミシガン中央駅が結ばれることになる。
ミシガン州は昨年11月と12月にも、州内のさまざまな分野のモビリティ関連プロジェクトへの資金拠出を相次いで発表した。
「自動車メーカーはこの数年、ソフトウエアとデジタルテクノロジーが未来の自動車の中核技術だと考えるようになった」と、S&Pグローバル・モビリティのブリンリーは言う。
「20年頃まで、ソフトウエアで動く自動車はまだ研究段階だったが、今は商業化・実用化の段階に移行しつつある。自動車メーカーはそのプロセスを自社の保有する施設で、そして地理的にも自社の拠点に近い場所で進めようとしている」