斜陽デトロイトは「デジタル」で蘇る──先端技術の集積拠点として台頭
MICHIGAN MOVES UP
ミシガン州への投資を増加させているのは、フォードだけではない。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)も同様の動きを見せている。FCAは21年にPSAグループと合併し、現在はステランティスの一部になっている。
合併前のFCAは、シリコンバレーにユーザー体験部門とデザイン部門を置いていた。しかし合併後はシリコンバレーに加えて、ミシガン州にもステランティスの「ソフトウエア体験」部門が設置された。
「デトロイト地域はユーザー体験関連のテクノロジーで傑出した成果を上げつつあり、シリコンバレーの部品関連企業の多くはデトロイト周辺にも拠点を設け始めている」と、ステランティスのビンス・ガランテ副社長(グローバル・ユーザー体験デザイン担当)は本誌に語っている。「私たちは、アップル、ディズニー、マイクロソフトなどの出身者を採用して、グループ傘下の14のブランド全てを支援している」
州政府も助成金で後押し
フォード、クライスラーと共に米3大自動車メーカーの一角であるGMも、ミシガン州への投資に力を入れている。
ミシガン州オリオンタウンシップの工場を、フルサイズのEVピックアップトラックの工場に転換するために40億ドルを投資。韓国のLGエナジーソリューションとの合弁会社を通じて、同州ランシングにバッテリー工場を建設するためにも26億ドルを投資している。
GMの2カ所の新工場では、合わせて4000の新規雇用が創出されると期待されている。ミシガン州が運営する「ミシガン戦略ファンド」は、この2つのプロジェクトに合計6億ドルを超す助成金の拠出を決めた。
LGは、GMとの合弁によるランシングのバッテリー工場のほかに、同州ホランドのバッテリー工場の拡張も進めている。米CNBCの最近の報道によると、ミシガン州はジョージア、ケンタッキー両州と共に、2030年までにアメリカのEV用バッテリー生産の中心地になる可能性が高いという。
「この動きは、昨年EVの人気が高まってから始まったわけではない。全ては15年にまでさかのぼる」と、この1月までミシガン州の最高モビリティ責任者を務めたトレバー・ポールは本誌に語った。「私たちはもともと自動運転車に注力していたが、EVに方向転換し、今は水素に目を向け始めている」
ミシガン州での自動車産業関連の投資は、従来型の自動車づくり以外にも向けられている。バイデン政権の「インフレ抑制法」の下、連邦政府の資金援助により、太陽光パネル、EV充電器、走行中のEVに充電できる道路など、さまざまなテーマのプロジェクトが計画されている。