わが社は特別...「自信過剰」という病魔は、世界最強の企業「GE」すら破壊した
‘Hype, Hubris and Blind Ambition’
伝説のCEOウェルチ(左)と後任のイメルト SHAWN BALDWINーBLOOMBERG/GETTY IMAGES
<分社化に追い込まれたかつての最強コングロマリットGE。その失敗を分析した著者に聞く最大のミスと教訓>
ゼネラル・エレクトリック(GE)は歴史に名高い企業で、究極の優良銘柄だった。
アメリカの電力事業の2人の先駆者、トーマス・エジソンとチャールズ・コフィンの設立した2社が合併し、GEが誕生したのは1892年。以降、誰もが知る巨大コングロマリットに成長した。だが130年後の今、同社は部門ごとに切り売りされる身だ。
なぜこんなことになったのか。金融ジャーナリストのウィリアム・D・コーハンは、新著『パワーカット――あるアメリカの象徴の盛衰』でGEの没落について分析している。1981年から20年間にわたり同社の会長兼CEOを務めた故ジャック・ウェルチと会ったこともあるコーハンに、メレディス・ウルフ・シザーが話を聞いた。
――あなたは80年代、GEキャピタルに勤務していた。電球製造事業から始まった会社が、GEキャピタルという世界有数の金融機関を擁するようになったわけは?
GEキャピタルは大胆な賭けを恐れず、リスクに見合うリターンを求める組織で、そこがすごいと思っていた。
ジャック(・ウェルチ)が目を付けたのは、トリプルA評価企業だったGEの極めて低い資金調達コストと、融資先から得る利払いの差が生む利益だ。その優位を追求し、LBO(レバレッジド・バイアウト)融資など、各種の興味深い分野に参入した。
――現代では、ウェルチの経営手法のどこを見習うべきか。
誰にもまねできない方法で才能を発掘し、育成する能力だ。部下の提案に対して、ジャックは驚くほど柔軟でもあった。喜んで意見を聞くと言うCEOは大勢いるが、現実にはほとんど耳を傾けない。ジャックは実際にそうした。
――ウェルチのCEO就任当時と比べて、世界経済は米企業にとってより有利か。それとも不利になっているのか。
多くの米企業は物質面の競争優位性を維持している。今も最高の技術があり、最も冒険精神に富んだ起業家らがいて、最も称賛される資本市場を擁し、アイデアの成功によって得られる報酬は最も高い。
他国に追い上げられ、競争が厳しくなっているのは確かだが、今もアメリカには突出した創造性があると信じている。政治制度の内部崩壊を防げれば、という条件付きだが。
――ウェルチが世界最大の企業に育てたGEは、後任のジェフリー・イメルトの下で次第に崩壊していった。ウェルチは後任者を非難したが、イメルトの言い分は異なる。
よくあることだが、真実はその中間地点にある。
ジャックが自社を誇大宣伝し、金融アナリストや投資家を沸かせたのは間違いない。GEの評価は産業・金融企業としてはあまりに高すぎた。だが、それがジャック流の魔法だった。イーロン・マスクとテスラの場合と同様、人を信じさせることができた。