最新記事

経営

わが社は特別...「自信過剰」という病魔は、世界最強の企業「GE」すら破壊した

‘Hype, Hubris and Blind Ambition’

2022年12月1日(木)17時04分
メレディス・ウルフ・シザー

221206p56_GEI_03.jpg

金融ジャーナリストのコーハンはGE崩壊を『ジェンガ』に例える JONNO RATTMAN

ジェフ(・イメルト)は自信過剰にたたられたのだと思う。残念ながら、重大な結果につながる判断ミスが多かった。ジャックの誇大宣伝とジェフの自信過剰の連鎖が命取りになった。

――アメリカの最優良企業の1つが分社化に至った最大の理由は何か。

巨大金融会社ならではのリスクへの無理解、大言壮語と期待外れの実績、貪欲なヘッジファンドの株主参入など数多くの要因があるが、結局は自信過剰が原因だろう。GEは特別で、どんな決断をしても結果は吉だと思い込んだ。

GEはゲームの『ジェンガ』のようなものだった。どれほど順調でも、ミスが始まればやがて全部が崩れ落ちる。

――GEは昨年11月、医療機器・電力・航空機エンジンの3事業に分社化すると発表した。今後をどう予測するか。

いずれの事業も他社に買収され、GEは近い将来に消滅するのではないか。3事業は分割後、来年と再来年に上場予定だ。いつでも、誰でも買収可能になる。3つとも各分野の最大手級で、競合企業やプライベート・エクイティ・ファンドに狙われるはずだ。

時価総額で世界最大だった企業が近いうちに消える。そんな理解し難いことがなぜ起きたのかが、新著のテーマだ。

――コングロマリット経営には相乗効果があったのか。

金融業界は一時的な熱狂に浮かれる傾向があり、はっきりした理由もないまま企業価値を高く評価するようだ。60~80年代のコングロマリットがそうだった。

それ以前も、もちろんGEは多角的な企業だったが、電化製品製造や電力システム、航空機エンジンといった産業事業が中心だった。金融業界がコングロマリットという形態を評価し始めると、ジャックは前任のレグ・ジョーンズに続いて、従来は存在感の薄かった分野に手を広げた。

GEキャピタルを設立し、NBCの親会社の多角企業RCAを買収し、医療機器製造も始めた。ジャックがやることは、ほぼどれも大成功した。

それでも、全てが整合して「相乗的」に作用するのかという疑問は残った。答えはおそらくノーだが、大半の事業はかみ合ってうまくいった。

もちろん今では、そんな問いには意味がない。GEは130年の歴史の末に、3社に分割されようとしている。自らが築き上げたコングロマリットの末路を目にしたら、ジャックは激怒しただろう。

――執筆準備中、最も意外だった発見は?

GEが以前にもRCAを所有していたとは知らなかった。第1次大戦後に(当時の米大統領)ウッドロー・ウィルソンは、戦時中に有効性が証明された無線技術を掌握する国内企業を求めて、いわばGEにRCA設立を指示した。

その後、30年代に(独占禁止法違反で)提訴され、GEはRCAの分離を迫られた。だが85年、当時の史上最高金額の約63億ドルでRCAを買収すると発表したとき、一連の経緯が話題になることはほぼなかった。GEのRCA巨額買収は史上最高のM&A(合併・買収)事例の1つだ。

221206p56_GEI_02.jpg

PORTFOLIO

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発、景気敏感株がしっかり TOPIX最

ビジネス

オリックス、純利益予想を上方修正 再エネの持ち分会

ビジネス

オリックス、自社株取得枠の上限を1500億円に引き

ワールド

台湾有事巡る発言は悪質、中国国営メディアが高市首相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 6
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中