商用軽EVに低価格で仕掛ける中国勢、打ち破れるか日本車ブランドの壁
EV率1%、大きな伸びしろ
一方、日本の自動車メーカーでは三菱自が異例の勝負に出た。11年に国内初の軽商用EVとして発売した「ミニキャブ・ミーブ」の再販だ。当時は商用EVへの関心が低く需要が低迷、21年3月に生産を終了していた。再販に至った背景について、同社軽EV推進室の五島賢司室長は、20年に菅義偉元首相が宣言した「50年のカーボンニュートラル実現」以降、「世の中の潮目を感じた」と話す。
再販にあたり一部の安全機能などを追加したが、性能は従来型とほぼ同じ。電池や車体、デザインも従来のままで全面改良はしていない。今は競合がまだ少ないと判断。同車への問い合わせが増えるにつれ、「なるべく早く顧客に届けたい」と、まずは従来モデルの投入を決断した。
価格も約243万円からと従来のまま据え置いた。国の補助金を考慮すると実質200万円程度だ。航続距離は133キロメートル。今後は新モデルも「将来的に視野に入れて検討していく」としている。
当面の生産台数は月間400台、年間にすると約4800台。ミーブの累計販売台数は約10年間で1万0489台、生産終了前の20年度は1456台にとどまっていたため、従来の販売台数を大幅に上回るペースとなる。日本郵政傘下の日本郵便には19年秋から現在まで1500台を納車しており、今後も納車台数は増える見込みという。
このほか、トヨタが主導し、スズキ、ダイハツ工業、いすゞ自動車が参画する商用車技術開発会社コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジー(CJPT)やホンダなどの日本勢も投入に向けて準備を進めている。CJPTは23年1月から社会実証を始め、ホンダは24年前半に商用軽EVを発売する計画だ。
全国軽自動車協会連合会によると、22年4月時点の軽の保有台数は約3100万台で、そのうち商用車が約4割。軽商用バンの総需要は毎年約20万台で推移しているという。同車種は主にスズキ、ダイハツ工業、ホンダが強みとしているものの、現状ではEVはミニキャブ・ミーブのみのため、EV比率は軽商用バン全体の1%前後にとどまる。