商用軽EVに低価格で仕掛ける中国勢、打ち破れるか日本車ブランドの壁
顧客のニーズが多様に
ホンダの三部敏宏社長は「EVを普及させるためには、商用、特に日本の主力である軽自動車という領域を攻略するのが一番早い」と4月の記者会見で述べている。法人での商用EV導入は事業活動におけるCO2削減量の公表が可能となるなど、副次的なメリットが多く、個人向けより導入に対するインセンティブが高い。
日本郵便は、25年度までの5年間で軽自動車1万3500台、二輪車2万8000台の集配用車両のEV化を目指す。実証実験で得られた効果のほか、自動車メーカー各社が商用EVへの参入を表明したことなどを理由に、計画の前倒しと上積みを発表している。ヤマトホールディングスのヤマト運輸も、30年までにEV2万台を導入することを目指している。
ASFの飯塚社長によると、「とにかく車両がいち早く欲しいという企業もあった」という。日本における商用車市場はこれまで国内自動車メーカー一強の状態が長らく続いてきたが、商用車のEV需要が急速に高まる中、状況は変わりつつある。公表されているモデルでは、ASFの車両のほうが、ミニキャブ・ミーブより低価格で航続距離も長い。
東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは、国内自動車メーカーはこれまでの取引やネットワークもあり、購入先がある程度確定しているとみる一方、価格が魅力で購入を決める法人顧客もいるため、中国製も選択肢に入ってくると分析する。
「手っ取り早く(EVが)欲しいという顧客もいれば、買うなら(機能の)きちんとしたものを買いたいという顧客もいるだろう」と指摘する。
(佐古田麻優、杉山聡 編集 橋本浩)
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