展望2023:ウクライナ戦争がもたらした穀物やオイルシードの不足 食品価格の上昇続く

ウクライナでの戦争やそれに伴う燃料高騰は、天候の良しあしに関わらず2023年の世界の農業生産を抑制する見込みだ。写真は畑でもみ殻を吹き飛ばす農民。10月、インド西部マハラシュトラ州にあるカダッドヘ村で撮影(2022年 ロイター/Rajendra Jadhav)
ウクライナでの戦争やそれに伴う燃料高騰は、天候の良しあしに関わらず2023年の世界の農業生産を抑制する見込みだ。価格上昇が農家にとって生産量を増やす追い風になるにもかかわらず、供給量は依然、ひっ迫することになりそうだ。
コメや小麦といった主要農産物の生産量は、少なくとも2023年上半期は減少した在庫を補充するには満たないだろう。また、食用油に加工される穀物の生産は、ラテンアメリカ地域と東南アジア地域での悪天候に苦しめられている。
「需要を満たすには、記録的な量の穀物供給が必要になる。来年は今年よりも必ずうまくやらなければならない」とシドニーの農業ブローカー会社IKONでアドバイザリー業務を統括するオレ・ホウエ氏は話す。
「穀物やオイルシードの世界的な生産見通しを見る限り、現段階でその可能性は非常に低い」
小麦やトウモロコシ、パーム油の先物は、歴代最高記録や数年来の高値に比べれば下げているものの、小売市場での価格は依然高いままで、来年もひっ迫した供給が高値を支える展開が予想される。
なぜ重大なのか
2022年の食品価格は過去最高水準を記録し、世界中で数百万人の人々を苦しめている。飢餓や栄養失調といった問題がもともと存在したアフリカやアジアの特に貧困な地域では、特に影響が深刻だ。 食料輸入にかかるコストは2022年、既に2兆ドル(約270兆円)近くにまでのぼり、貧困国では消費量の削減を強いられている。
小麦の主要輸出国であるウクライナがロシアによる侵攻を受け、悪天候やパンデミック関連の規制で既に打撃を受けていた市場への供給は縮小。シカゴ穀物市場では、代表的な小麦先物価格が1ブッシェル当たり過去最高の13.64ドルに急騰した。