ジミヘン、カート・コバーン、エイミー・ワインハウス...天才は「27歳で死ぬ」が条件?
コバーンの死後、ニルヴァーナのメンバーとボーカルに迎えたジョーン・ジェットによるライブ(2014年4月) Lucas Jackson-Reuters
<天才ではない私たちが創造性を発揮するにはどうすればよいのか? 上から目線の自己啓発書とは一味違うアイデアを生み出す「ヒント」>
エッセイ『女ふたり、暮らしています。』が評判となった韓国の作家、キム・ハナ。その彼女が、コピーライターとして培った発想力やアイデアの原点について記した本『アイデアがあふれ出す不思議な12の対話』が先日、日本でも翻訳出版された。一方的に「ああしなさい」「こうしなさい」と押し付ける自己啓発書でも、単純な法則やハウツーでもなく、真夜中のバーで語り合う男女の対話形式で記した発想力を養う「アイデアの本質」が詰まった1冊だ。
ここでは、決して天才ではないわれわれが、創造性を発揮してアイデアを生むためのヒントとなる部分を『アイデアがあふれ出す不思議な12の対話』から全3回にわたって抜粋して紹介する。今回は、その第2回。
第1回:「天才に学ぶ」類のアイデア本が、凡人には役立たない理由
第3回:アイデアが次々と沸く会議と、空気が固まる会議の違いとはなにか
病や狂気に宿る天才性というロマンチックさ
『ロード・オブ・ザ・リング』(二〇〇一)のピーター・ジャクソン監督が昔作ったカルト映画『乙女の祈り』(一九九四)で、十代の少女役を演じたケイト・ウィンスレットがこんなセリフを吐きます。「立派な人はみんな、骨や肺を患っている。ぞっとするほどロマンチックなんだから」。病や狂気に宿る天才性というのは、多分にロマンチックなものです。大衆はそれを絶えず神話化し、消費するのに飽きることはありません。
早世はロマンチックな天才神話の最たるものです。「27クラブ」をご存じですか。二十七歳で死んだ欧米のミュージシャンたちのクラブです。ジミ・ヘンドリックス(一九四二~一九七〇)、ジャニス・ジョプリン(一九四三~一九七〇)、ジム・モリソン(一九四三~一九七一)、カート・コバーン(一九六七~一九九四)に続き、少し前にエイミー・ワインハウス(一九八三~二〇一一)がそこに仲間入りしました。美しさは危うさからもたらされるもので、うつ病や薬物中毒は彼らの音楽にある種の影響を及ぼし、独特の美しさを作り上げたりもしますが、結局は命まで奪っていきました。カート・コバーンは遺書にこんなことを書き残しました。「だんだん消えていくよりは、一瞬にして燃え尽きた方がいい(It's better to burn out than to fade away.)」
彼らの死は、27という数字と共に悲劇的な神話性を帯びることになりました。そうして「天才は二十七歳で死ぬ」という神話はさらに強調されていくのです。