最新記事

ビジネス

ジミヘン、カート・コバーン、エイミー・ワインハウス...天才は「27歳で死ぬ」が条件?

2022年10月6日(木)18時09分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

アイデアがあふれ出す不思議な12の対話
 著者:キム・ハナ
 翻訳:清水 知佐子
 出版社:CCCメディアハウス
 (※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

理性的で長生きするたくさんの天才たち

私たちが「大人らしく」天才の神話を見つめるなら、彼らの苦悩と死を嘆き悲しみ、彼らが成し遂げたことに畏敬の念を抱き、純粋な集中力とひたむきさを見習うよう努力すべきだと思います。でも、人々は天才をロマンチックな存在にしたがります。そして、ある人々はひたむきさや真面目さよりも狂気と奇癖を真似ようとします。自ら創造的な人間の敏感さを標榜(ひょうぼう)し、非凡さを強調する人たちはたいてい凡才で、単に性格があまりよくない場合が多い。天才性は現れるものであって表すものではありません。それに、狂気に囚われた天才も多いけれど、理性を失うことなく無病で長生きする控えめな天才の方がもっと多いし、真に創造的でありながら内面をむき出しにしない人々が私たちの周囲に大勢います。

天才がたやすく何かを成し遂げたように見えるなら、それは並外れた集中力で有形無形の知識をすばやく吸収し、柔軟に思考したからです。彼らは空から(ニュートンが重力の法則を発見するきっかけとなった)リンゴが落ちてくるのを待つ人たちではありませんでした。最後の一滴がコップの水をあふれさせるように、知識と思考がたっぷり満ちた時、偶然彼らを刺激する何かが近づいてきただけなのです。だとしたら、私たちが天才の生き方から学ぶべきことはリンゴが落ちるのを待つのではなく、リンゴのロゴスを見抜けるように準備すべきだということではないでしょうか。だから、自分の仕事の基本を誠実に学んできたあなたのような人なら、創造性に対する姿勢も立派に自分のものにすることができると信じます。創造性は決して少数の、神に選ばれた特別な人だけの専有物ではありません。言いましたよね? 創造性は一つの態度だって。

――あ、ありがとうございます。では、それはどんな態度なのか話してもらえますか。どうすれば僕が創造性を育てることができるのかを。

お節介を正式に許された彼女は、かなり確信に満ちた口調で言った。

――まず、私が今からする話は、頭がおかしくなったり早死にしたりしなくても十分にやり遂げられることだから安心してください。どんな人でも創造性の可能性を持っています。それは、まさに愛することができる能力と同じです。私たちは映画や小説に出てくる壮大でドラマチックな恋物語が好きですが、同時に、素朴なやり方で誰かを十分に愛せるということを知っているではありませんか。おばあさんは孫を愛し、小学生は親友を愛し、ファンはアイドルを愛し、恋人たちはお互いを愛します。友人を愛し、犬を愛し、ビールを、音楽を、地球を愛することもできます。愛は偉大で高貴な力であることを知っていて、私たちは自らがその力の一員であり発生源であることをよく知っているのです。

それなのに、愛と同じぐらい人類の重要な力であり、根幹である創造性はなぜ、私たち全員が備えることのできないものになってしまっているのでしょうか。どうして私たちは、誰でも創造性を発揮できると考えられないのでしょうか。誰でも独創的になることができます。誰でも愛することができるのと同じように。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ

ビジネス

EXCLUSIVE-ECB、銀行資本要件の簡素化提

ワールド

米雇用統計とCPI、予定通り1月9日・13日発表へ

ワールド

豪が16歳未満のSNS禁止措置施行、世界初 ユーチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中