ジミヘン、カート・コバーン、エイミー・ワインハウス...天才は「27歳で死ぬ」が条件?
『アイデアがあふれ出す不思議な12の対話』
著者:キム・ハナ
翻訳:清水 知佐子
出版社:CCCメディアハウス
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
理性的で長生きするたくさんの天才たち
私たちが「大人らしく」天才の神話を見つめるなら、彼らの苦悩と死を嘆き悲しみ、彼らが成し遂げたことに畏敬の念を抱き、純粋な集中力とひたむきさを見習うよう努力すべきだと思います。でも、人々は天才をロマンチックな存在にしたがります。そして、ある人々はひたむきさや真面目さよりも狂気と奇癖を真似ようとします。自ら創造的な人間の敏感さを標榜(ひょうぼう)し、非凡さを強調する人たちはたいてい凡才で、単に性格があまりよくない場合が多い。天才性は現れるものであって表すものではありません。それに、狂気に囚われた天才も多いけれど、理性を失うことなく無病で長生きする控えめな天才の方がもっと多いし、真に創造的でありながら内面をむき出しにしない人々が私たちの周囲に大勢います。
天才がたやすく何かを成し遂げたように見えるなら、それは並外れた集中力で有形無形の知識をすばやく吸収し、柔軟に思考したからです。彼らは空から(ニュートンが重力の法則を発見するきっかけとなった)リンゴが落ちてくるのを待つ人たちではありませんでした。最後の一滴がコップの水をあふれさせるように、知識と思考がたっぷり満ちた時、偶然彼らを刺激する何かが近づいてきただけなのです。だとしたら、私たちが天才の生き方から学ぶべきことはリンゴが落ちるのを待つのではなく、リンゴのロゴスを見抜けるように準備すべきだということではないでしょうか。だから、自分の仕事の基本を誠実に学んできたあなたのような人なら、創造性に対する姿勢も立派に自分のものにすることができると信じます。創造性は決して少数の、神に選ばれた特別な人だけの専有物ではありません。言いましたよね? 創造性は一つの態度だって。
――あ、ありがとうございます。では、それはどんな態度なのか話してもらえますか。どうすれば僕が創造性を育てることができるのかを。
お節介を正式に許された彼女は、かなり確信に満ちた口調で言った。
――まず、私が今からする話は、頭がおかしくなったり早死にしたりしなくても十分にやり遂げられることだから安心してください。どんな人でも創造性の可能性を持っています。それは、まさに愛することができる能力と同じです。私たちは映画や小説に出てくる壮大でドラマチックな恋物語が好きですが、同時に、素朴なやり方で誰かを十分に愛せるということを知っているではありませんか。おばあさんは孫を愛し、小学生は親友を愛し、ファンはアイドルを愛し、恋人たちはお互いを愛します。友人を愛し、犬を愛し、ビールを、音楽を、地球を愛することもできます。愛は偉大で高貴な力であることを知っていて、私たちは自らがその力の一員であり発生源であることをよく知っているのです。
それなのに、愛と同じぐらい人類の重要な力であり、根幹である創造性はなぜ、私たち全員が備えることのできないものになってしまっているのでしょうか。どうして私たちは、誰でも創造性を発揮できると考えられないのでしょうか。誰でも独創的になることができます。誰でも愛することができるのと同じように。