中国勢が支配するEV電池市場を奪還へ カギとなるのは急速充電と小型化
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EV開発競争を繰り広げている自動車メーカーが現在注力しているのは走行距離の延長だ。しかしバッテリーのスタートアップ企業は既に、より小型で長持ちし、安価でしかも充電が急速にできる次世代バッテリーの実用化に取り組んでいる。写真はニオボルトのバッテリー。英ケンブリッジで6月撮影(2022年 ロイター/Nick Carey)
電気自動車(EV)開発競争を繰り広げている自動車メーカーが現在注力しているのは、いざという時に充電設備が見つかるかどうかという消費者の不安を和らげるための走行距離の延長だ。しかしバッテリーのスタートアップ企業は既に、より小型で長持ちし、安価でしかも充電が急速にできる次世代バッテリーの実用化に取り組んでいる。
各自動車メーカーは、市場をリードするテスラを追いかける形で、1回の充電から次の充電までに300マイル(482キロ)走れるEVの生産を目指している。一方バッテリーのスタートアップ企業は、今後公共の充電施設が普及していくとともに走行距離はさほど重要ではなくなると考え、ニオブやシリコンカーボン、タングステンといった新素材を用いた急速充電バッテリーを試す段階に入った。
バッテリーは、EVを構成する部品で最も値段が高い。それだけに本当に急速充電が可能となり、さらに充電施設が至るところで利用できるようになれば、自動車メーカーにとっては、もっと小型バッテリーを備えたEVを生産し、手頃な価格設定でより販売台数を増やすことで利益を拡大するビジネスモデルが構築されるだろう。
酸化ニオブ電極を利用し、ほんの数分で充電ができるバッテリー開発を進めている英スタートアップ企業、ニオボルトのシバレディ最高経営責任者(CEO)は「EV市場の高価格帯にいる初期採用者(アーリーアダプター)は比較的大型で走行距離を長くしてくれるバッテリーパックを欲しがった。なぜならその購買力があったからだ。より価格を重視する主流採用者には、もっと小さいが、(化石燃料車と)同じように5分で燃料充てんが可能なバッテリーパックが必要になる」と語った。
現状で世界の車載バッテリー生産市場を支配しているのは中国勢で、例えば寧徳時代新能源科技(CATL)は1回の充電での走行距離を長くするバッテリー開発を進めている。これに対してニオボルトや同じ英国のエチオン・テクノロジーズ、米グループ14テクノロジーズといった欧米のスタートアップ企業は、充電時間が非常に短いバッテリーの市場投入に尽力している。
スタートアップ企業のデータを提供するピッチブックによると、昨年の車載バッテリー技術関連投資は94億ドル(約1兆2900億円)と、2020年の15億ドルから6倍以上に膨れ上がった。