中国勢が支配するEV電池市場を奪還へ カギとなるのは急速充電と小型化
バッテリー小型化は、EV需要が高まる中でも素材の供給制約を緩和し、中国が精製と加工の分野を牛耳っているコバルトやニッケルの使用量を減らす効果もある。また自動車メーカーは、EV生産で有害な素材の使用と温室効果ガス排出がいずれも少なくなるともアピールできる。
フォード・モーターのファーリーCEOは6月、「非常に高価なバッテリーの最小化に向けて車を再設計することで、業界の様相は一変するだろう」と強調。フォードとしても2026年の次世代EV投入時には、他社に対抗できる走行距離を維持しつつバッテリーはできる限り小型にしたいとの考えを示した。
一般向け実用化には時間
今のバッテリーは電力を吸収する能力に限りがある。急速充電するとバッテリーの寿命が縮むため、ほとんどのEVは充電速度に制限を設けているのが実情だ。
しかしニオボルトのシバレディ氏は、4つのバッテリーを3分前後で充電し、これらを接続した自動掃除機がフロアで忙しく作業をする光景を見せてくれた。
ニオブは安定した性質の金属で、鉄鋼製品の耐久力強化に使われるケースが多く、世界最大の鉱床はブラジルとカナダにある。ニオボルトやエチオンによると、電極技術を用いることでニオブのバッテリーが現在の製品より充電時間がずっと短くなり、しかも寿命が大幅に延びるという。
ただニオボルトが目下力を入れているのはレース用の高性能EV向けバッテリー。シバレディ氏は、自動車メーカーが同社のバッテリーを一般大衆用の車に使う態勢が整うまでにはまだ何年もかかるとの見方を示した。
エチオンのバッテリーも当初の用途は商用EVで、常時稼働していて急速な充電が求められる鉱山事業用EVなどが念頭にある。ジャン・ドゥ・ラ・ベルピリエCEOは、2025年までには普通乗用車に自社のバッテリーを提供することを目標に掲げ、「バッテリーが小型化すれば販売価格が下がり、より多くの人々がEVを買えるようになる」と説明した。
ブラジルのニオブ生産・精製大手CMBBは、エチオンをはじめとする幾つかのスタートアップ企業に投資するとともに、ナノ・ワンや東芝、フォルクスワーゲン(VW)のトラック・バス部門トレイトンのブラジル子会社などとニオブを利用したバッテリーの実証実験を行っている。
CMBBのバッテリー事業責任者は、ニオブのエネルギー密度は現行の幾つかのバッテリーより最大20%低くなるものの、寿命が恐らく3倍から10倍に延び、安全性が高まりつつ、数分間で充電ができるようになると明らかにした。
スタートアップ企業が開発しているバッテリー用素材はニオブだけではない。グループ14テクノロジーズは、シリコンカーボンを使った電極でリチウムイオンバッテリーの蓄電量を最大50%高める。同社は5月、投資家から4億ドルを調達した。
メルセデスが支援するバッテリーメーカーのストアドットがグループ14の素材を試した結果、10分間で80%の充電に成功。グループ14のルエベCEOは、同社の技術によって5分の急速充電が可能になると述べ、「5分か10分でフル充電ができるようになれば、(EVの)走行距離が150マイルだろうが300マイルだろうが大した意味はなくなる」と言い切った。
(Nick Carey記者、Paul Lienert記者)
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