最新記事

世界経済

世界で食料品の価格が高騰 主な原因と今後の展望まとめ

2022年5月17日(火)08時05分
野菜を小口切りにする人

世界で食糧価格が上昇を続けている。主な原因と今後の見通しを整理した。写真は4月、ペルーの首都リマ近郊のスープキッチンで撮影(2022年 ロイター/Daniel Becerril)

世界で食糧価格が高騰を続けている。主な原因と今後の見通しを整理した。

なぜ食料価格は上昇しているのか

グローバルな食料価格が上昇を始めたのは2020年半ば、各国企業が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックのために活動を停止し、サプライチェーンが圧迫されたことによるものだ。

農産物をスーパーマーケットまで運ぶトラック輸送が利用できなくなったため、農家は牛乳を廃棄し、果実や野菜は腐るままとなり、消費者が食料の備蓄に走ったことで価格は高騰した。ロックダウンによる移動制限で移民労働者が不足したことも、世界的な収穫低下につながった。

その後も、世界各地で主要農産物に問題が発生した。大豆輸出量で世界首位のブラジルは、2021年に深刻な干ばつに襲われた。中国における今年の小麦収穫量は、これまででも最悪の部類に入る。パンデミックの中で食料安全保障への関心が高まったことで、将来的な欠乏に備えて主要穀物の備蓄を積み上げた国もあり、グローバル市場への供給が絞られた。

2月末に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、食料価格の展望を急激に悪化させた。

国連食糧農業機関(FAO)によれば、食料価格は2月に過去最高を記録し、3月にはさらに記録を更新した。ロシアとウクライナを合わせた小麦と大麦の生産量は世界の3分の1近くに達し、調理用のひまわり油の輸出量では世界の3分の2を占めている。ウクライナはトウモロコシ輸出量で世界第4位だ。今回の紛争によりウクライナの港湾や農業インフラが打撃を受け、今後数年にわたり、同国の農業生産が制約される可能性は高い。

一部のバイヤーは、西側諸国による制裁を理由に、ロシア産の穀物の購入を控えている。

インドネシアは4月末、調理用油の国内供給を確保するため、パーム油の輸出をほぼ全面的に禁止した。ケーキからマーガリンに至る食品全般で使われている食用油に関して世界最大の生産国からの供給が途絶えたことになる。

食料価格のうち最も上昇しているのは何か

パンデミックの期間を通じて、植物油の価格高騰が全般的な食料コストの上昇につながった。また、ウクライナでの戦争によりトウモロコシと小麦の出荷が制約された結果として、3月には穀物価格もやはり過去最高を記録した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 6
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 7
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 8
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 9
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 10
    トランプに弱腰の民主党で、怒れる若手が仕掛ける現…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 7
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中