最新記事

世界経済

世界で食料品の価格が高騰 主な原因と今後の展望まとめ

2022年5月17日(火)08時05分

FAOによれば、4月には乳製品と食肉の価格も過去最高に達した。タンパク源へのグローバルな需要増大が続いており、またトウモロコシと大豆を中心とする家畜飼料の価格が高止まりしていることを反映している。さらに、欧州と北米における鳥インフルエンザの発生により、鶏卵や鶏肉の価格にも影響が出ている。

米国における3月のインフレ率を見ると、食肉、鶏肉、魚介類、鶏卵の指数は1年前に比べ14%、牛肉は16%上昇している。

食料価格はいつ下がるか

何とも言えない。農業生産は天候など予測困難な要因に左右されるからだ。国連のグテレス事務総長は5月初め、ウクライナの農業生産と、ロシア産食料と肥料の世界市場への供給が回復しないかぎり、グローバルな食料安全保障の問題は解決できないと述べている。

世界銀行は、2022年の小麦価格は40%以上上昇する可能性があると予測している。世銀では2023年には前年に比べ農産物価格が下落すると見ているが、アルゼンチンやブラジル、米国からの穀物供給が増大することが前提であり、これについては何の保証もない。

肥料の主要生産国であるロシアとその同盟国であるベラルーシからの買い控えの影響で肥料の価格が急騰しているため、農家が適切な量の施肥をためらう可能性がある。これは収量の減少や生産の低下につながり、危機の長期化を招くかもしれない。地球温暖化によって異常気象が以前よりも一般化しつつあり、これもまた、穀物生産にとってリスクとなっている。

最も影響を受けているのは

フィッチ・レーティングスによれば、米国では3月、インフレに占める食料価格のシェアが最大となった。これは1981年以来初めてのことだ。4月、英国における店頭価格も、過去10年以上見られなかったペースで上昇した。だが食料価格の上昇により最大の影響を受けているのは、所得に占める食費の比率が先進国より高い開発途上国の住民だ。

国連と欧州連合が共同で設立した食料危機対策グローバルネットワークは年次報告の中で、ロシアによるウクライナ侵攻はグローバルな食料安全保障に深刻なリスクとなっていると指摘。食糧危機に直面している国として、特にアフガニスタン、エチオピア、ハイチ、ソマリア、南スーダン、シリア、イエメンといった国を挙げている。

(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・コロナ感染で男性器の「サイズが縮小」との報告が相次ぐ、「一生このまま」と医師
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・日本のコロナ療養が羨ましい!無料で大量の食料支援に感動の声
・コーギー犬をバールで殺害 中国当局がコロナ対策で...批判噴出


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中