パンからポテチ、化粧品にまで使われる植物油が全面禁輸!? ウクライナ戦争の余波が影響
インドネシアが全面禁輸を発表したパーム油のもととなるアブラヤシの実 Willy Kurniawan - REUTERS
<さまざまな輸入品が値上がりするなか、食品から洗剤にまで重宝される植物油まで......>
インドネシア政府が同国の輸出主要品目でもあるパーム油の全面的輸出禁止措置に踏み切ってから約3週間。パーム油の価格が高騰し、インドネシアから輸入している日本などの各国の間で不安が拡大する一方、他の油製品もパーム油の品薄感に伴い値段が上昇するなど消費者にとっては厳しい状況が続いている。
パーム油というとあまり馴染みがないかもしれないが、植物油、マーガリン、ショートニング、グリセリン、界面活性剤というとイメージしやすいのではないだろうか。パンやポテトチップス、フライドチキン、ドーナツ、コロッケなどに使用され、食品以外にもシャンプー、洗剤、石鹸そして近年はバイオマス燃料としても利用されており、日本人の生活にも深く関わっている。
こうしたさまざまな用途で使われているパーム油の生産で世界シェア55%を占めているのがインドネシアだ。最大輸出国の突然の輸出停止措置を受け、シェア2位のマレーシアは増産して、国際社会での供給不足への対策に乗り出そうとしており、今後パーム油を巡ってインドネシア、マレーシア間の摩擦が増大する可能性も出てきている。
国内消費の不足を危惧して禁輸に
インドネシア政府は4月28日、突然自国産のパーム油の輸出を一時的に全面的に禁止する方針を明らかにした。あまりに突然の措置にカリマンタン島東海岸のバリクパパンにあるパーム油輸出基地から海外に出港しようとしていた輸送船が何隻も沖合で足止めとなるなどの混乱が生じた。
インドネシアは世界最大のパーム油生産国で約4000万トン、2位はマレーシアが約2000万トンと3位のタイを大きく引き離している。日本は日本貿易振興機構(JETRO)などによると2021年には63万トンのパーム油を世界から輸入し、うち22%がインドネシア産という。
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領はパーム油の禁輸措置について、国内のパーム油消費の高まりを受けて不足となる事態を回避するためと説明。あくまで国内対策の結果であり、供給が補え、価格も安定したら禁輸措置は解除する、としている。
こうした措置に踏み切った背景には複数の要因があるとされる。
まずロシア軍によるウクライナ侵攻でロシアやウクライナからの「ひまわり油」が国際市場で品薄になったことが挙げられる。この品薄に連動する形でパーム油の価格も高騰。インドネシアのパーム油業者が国内より輸出に振り向けることで利益を確保しようと動き出したことも背景にあるといわれている。
また世界第4位の人口約2億7000万人のインドネシアはその約88%をイスラム教徒が占めており、約1カ月に及ぶ「断食」が終わる5月上旬は、帰省先の家庭で連日大人数による宴会状態となり、パーム油の消費が一気に増える時期でもある。