パンからポテチ、化粧品にまで使われる植物油が全面禁輸!? ウクライナ戦争の余波が影響
インドネシアでは今年2月以降、パーム油の価格が値上がりし、抗議デモも起きる事態となり、政府はさらなる価格高騰、品薄による国民の不満が高まることへの警戒感があったと見られている。
ジョコ・ウィドド大統領は「世界最大のパーム油の生産国であるインドネシアが食料油の入手に苦労しているのは皮肉だ」と述べ、アイルランガ・ハルタルト経済担当調整相も「国民を優先するという政府の献身的な姿勢の表れであり、禁輸政策に違反する企業は取り締まる」と述べ、政府一丸となって禁輸支持と禁輸措置厳守の方針を示している。
インドネシアは流通機構の整備の遅れから特に冷凍・冷蔵での食品流通が難しい面がいまだに残り、結果として大半の肉製品や魚介類は生食ではなくパーム油で揚げて料理するというのが一般的となっている。このため断食明けの大型連休で帰省する多くの国民の家庭でパーム油は必要不可欠となっているのだ。
そのパーム油も現在1リットル1万7000ルピア(約1500円)まで上昇しており、政府は「平均価格が1万4000ルピア(約1240円)に下がれば禁輸は解除する」と説明しているが、現在もパーム油の価格は上昇傾向にあり、品薄感も広がっていることから禁輸解除の目途は全く立っていないのが現状だ。
全てのパーム油品種を禁輸に
インドネシア政府が打ち出した禁輸は主に食用油として流通するパーム原油、精製パーム、パーム・オレインで、それ以外にもパーム油は化粧品や石鹸、シャンプーなどにも使われている。このため日本などは食用に供さなないパーム油の禁輸解除を求めているが、インドネシア政府はこれまで前向きには応じていないという。
インドネシアからパーム油を輸出しているのは日本のほかタイ、中国、シンガポール、ポーランド、パキスタンなどで、これらも日本同様にインドネシア政府への禁輸解除、一部解除を求め続けているという。
マレーシアがパーム油輸出増産へ
こうした状況のなか、パーム油の生産高世界第2位のマレーシアが動き出した。5月10日にマレーシア政府は2022年末までに現在のパーム油輸出を30%増産する計画を明らかにしたのだ。
これは住宅・地方政府・農園担当のズライダ・カマルディン大臣が明らかにしたもので、インドネシアのパーム油禁輸を受けた国際市場の需要の高まりに応えるためでもあるとしている。マレーシアはインドネシアの禁輸措置を受ける前の今年2月に増産に向けて海外からの労働者3万人の増員計画を進めており、こうした労働者の補強で輸出増産も可能であるとしている。
マレーシアとしては今回のインドネシア禁輸を機に国際市場でのシェア拡大と増産による国内のパーム油産業の振興も目論んでいるとみられており、今後のインドネシア側の出方が注目される事態となっている。
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