燃料の安定供給が危ぶまれる今、期待が集まる「地球にあふれる資源」という解決策
純水素型燃料電池を活用した実証施設「H2 KIBOU FIELD」(パナソニック株式会社)
<持続可能な未来に向けて加速する「脱炭素化」の流れ。日本を含む125カ国と一つの地域が目標に掲げる2050年までのカーボンニュートラルだが、その実現に向けた解決策の1つとして水素を活用した世界初の「RE100」の試みが注目を集めている>
脱炭素社会の実現という目標はもちろん、最近では原油価格の高騰やエネルギーの安定供給に対する懸念の高まりもあり、企業にとって再生可能エネルギーへの移行は、従来以上に喫緊の課題となりつつある。
そうしたなか、企業が自らの事業で使用する電力を100%再エネ(再生可能エネルギー)で賄うことを目指す国際的なイニシアチブである「RE100」への注目が、これまで以上に強まっている。現在はアップルやグーグル、マイクロソフトをはじめ、全世界で300社以上がこの企業連合に加盟し、日本からも69社が参加する。
そんなRE100化の実現に向けた挑戦の例として注目を集めているのが、本格的な水素の活用による工場のRE100化という世界初の試みを行う「H2 KIBOU FIELD」。2022年4月15日、燃料電池工場などがあるパナソニック株式会社の草津拠点にオープンした実証施設だ。
脱炭素化とともにエネルギーの地産地消を目指す
オープンに先駆けた4月14日に実施された記者発表会では、同社の燃料電池・水素事業を統括する加藤正雄氏が、今回の取り組みの背景について説明。脱炭素化に向けて再エネの普及が加速する世界のエネルギー動向を見据え、昨今の自然災害リスクの増大への対策として、地域インフラのレジリエンスを強化する分散型社会への移行などが語られた。
「エネルギーの地産地消を目指し、消費地における『CO2排出ゼロ』の発電所をつくることが、当社の推進するRE100ソリューションの全体像です」と、加藤氏は言う。
「今回の草津燃料電池工場の年間消費電力量は、一般家庭の約900戸分にあたる約2.7GWh。夏冬のピーク電力は約680kWにもなります。「H2 KIBOU FIELD」では、そうした工場のすべての電力を、太陽電池と蓄電池、純水素燃料電池の3電池連携の最適制御によって賄っていきます」
「H2 KIBOU FIELD」に設置されるのは、純水素型燃料電池99台と、1820枚の太陽光パネル。そこに約1.1MWhの余剰電力を蓄えることができるリチウムイオン電池を組み合わせ、約200名のスタッフが働く工場に必要な電力の自給自足を実現させる。