最新記事

再生可能エネルギー

燃料の安定供給が危ぶまれる今、期待が集まる「地球にあふれる資源」という解決策

2022年5月10日(火)18時15分
西田嘉孝

時と場所を選ばずに生み出せるクリーンな電力

ポイントとなるのは、昨年10月に発売された純水素型燃料電池「H2 KIBOU」だ。水素と空気中の酸素を反応させて電気をつくるコア技術などについては、累計20万台を販売する同社の「エネファーム」で培った技術を応用しながら、さらなる小型化や高効率化を実現。発電量や建物・敷地の形状に応じた配置も可能となっている。

「太陽光発電などの再エネは天候などに左右され不安定な面もありますが、水素ならいつでも電気を生み出すことができる。また、発電所から使用地に電気を運ぶ際に発生する送電ロスも、純水素型燃料電池があれば使用地で電気をつくることができるため発生しません。さらに電力使用量は常に変動するものですが、長期間・大量貯蔵が難しい電力と違い、水素の状態であれば長期で大量に保存しておくことが可能です」(加藤氏)

「H2 KIBOU FIELD」には7万8000リットルの巨大な液化水素タンクがあり、約1週間フル発電できる分の水素を貯めておくことができる。今年3月には、福島県沖を震源とする地震などの影響で東日本の電力需給が逼迫。東京電力・東北電力管内では異例の「電力受給ひっ迫警報」が発令されたが、たとえばそうした災害時でも、使用地に必要な電力を賄えるだけの水素と純水素型燃料電池があれば、何ら影響を受けることはない。

パナソニックでは今回の「H2 KIBOU FIELD」の稼働開始を皮切りに、2023年度内にはRE100ソリューションの実用化や本格導入の開始を予定。国内のパナソニックグループの工場や店舗、様々な事業者や自治体などに向けたソリューションの提供を行っていくとともに、欧州や中国をはじめとするグローバル市場への展開も目指していく。

今年1月に開かれた電子機器の見本市「CES 2022」では、CEOの楠見雄規氏が自ら新たな環境コンセプトとなる「Panasonic GREEN INPACT」を発表。2030年までに全事業会社のCO2排出量を実質ゼロとすることや、自社製品からのCO2排出量の削減、自社のソリューションや技術をB2B/B2Gに提供することで、脱炭素化を目指す世界にポジティブかつ巨大なインパクトを与えていくと宣言した。

持続可能な未来に向けて、「H2 KIBOU FIELD」はまさに大きな「希望」を切り拓こうとしているようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウ代表団、今週会合 和平の枠組み取りまとめ=ゼレ

ビジネス

ECB、利下げ巡る議論は時期尚早=ラトビア中銀総裁

ワールド

香港大規模火災の死者83人に、鎮火は28日夜の見通

ワールド

プーチン氏、和平案「合意の基礎に」 ウ軍撤退なけれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中