燃料の安定供給が危ぶまれる今、期待が集まる「地球にあふれる資源」という解決策
時と場所を選ばずに生み出せるクリーンな電力
ポイントとなるのは、昨年10月に発売された純水素型燃料電池「H2 KIBOU」だ。水素と空気中の酸素を反応させて電気をつくるコア技術などについては、累計20万台を販売する同社の「エネファーム」で培った技術を応用しながら、さらなる小型化や高効率化を実現。発電量や建物・敷地の形状に応じた配置も可能となっている。
「太陽光発電などの再エネは天候などに左右され不安定な面もありますが、水素ならいつでも電気を生み出すことができる。また、発電所から使用地に電気を運ぶ際に発生する送電ロスも、純水素型燃料電池があれば使用地で電気をつくることができるため発生しません。さらに電力使用量は常に変動するものですが、長期間・大量貯蔵が難しい電力と違い、水素の状態であれば長期で大量に保存しておくことが可能です」(加藤氏)
「H2 KIBOU FIELD」には7万8000リットルの巨大な液化水素タンクがあり、約1週間フル発電できる分の水素を貯めておくことができる。今年3月には、福島県沖を震源とする地震などの影響で東日本の電力需給が逼迫。東京電力・東北電力管内では異例の「電力受給ひっ迫警報」が発令されたが、たとえばそうした災害時でも、使用地に必要な電力を賄えるだけの水素と純水素型燃料電池があれば、何ら影響を受けることはない。
パナソニックでは今回の「H2 KIBOU FIELD」の稼働開始を皮切りに、2023年度内にはRE100ソリューションの実用化や本格導入の開始を予定。国内のパナソニックグループの工場や店舗、様々な事業者や自治体などに向けたソリューションの提供を行っていくとともに、欧州や中国をはじめとするグローバル市場への展開も目指していく。
今年1月に開かれた電子機器の見本市「CES 2022」では、CEOの楠見雄規氏が自ら新たな環境コンセプトとなる「Panasonic GREEN INPACT」を発表。2030年までに全事業会社のCO2排出量を実質ゼロとすることや、自社製品からのCO2排出量の削減、自社のソリューションや技術をB2B/B2Gに提供することで、脱炭素化を目指す世界にポジティブかつ巨大なインパクトを与えていくと宣言した。
持続可能な未来に向けて、「H2 KIBOU FIELD」はまさに大きな「希望」を切り拓こうとしているようだ。