最新記事

ロシア経済

デフォルトは目前 危機に陥るのは本当にロシア経済だけか

DEAD BROKE

2022年3月15日(火)13時20分
ブレンダン・コール
ロシア国旗

bennymarty-iStock.

<ウクライナ侵攻が経済に及ぼす大打撃を警告する声は高まる一方。資源大国の経済破綻で、西側も大量の返り血を浴びかねない>

ロシアは4月半ばにもデフォルト(債務不履行)に陥る可能性がある──。

米金融大手モルガン・スタンレーの新興市場ソブリン債戦略部門を率いるサイモン・ウィーバーは顧客向けのメモでそう述べたと、ブルームバーグが伝えた。「私たちはデフォルトが最もあり得るシナリオだとみている」

特に金融部門を狙い撃ちにした西側の厳しい制裁措置はロシア経済に確実にダメージを与えている。ロシアの一部銀行は国際的な決済システムであるSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出され、通貨ルーブルは底なしの下落を続けている。

ロシアは早ければ4月15日にデフォルトする可能性があるとみられている。この日に満期2023年と2043年のドル建てロシア国債の利払い猶予期間(30日)が終わるからだ。

ロシアのデフォルトは「通常のデフォルトとは比べものにならないだろう」と、ウィーバーのメモには書かれている。ベネズエラのケースが参考になるというのだ。

ベネズエラ政府と国営のベネズエラ石油会社は600億ドルの債務残高を抱えて2017年にデフォルトし、国家経済を奈落の底に突き落とした。

「市場は通常のデフォルトに加え、近い将来において債務再編の望みが全くない壊滅的なデフォルトまでも織り込んだ価格を付け始めている」と、英調査会社オックスフォード・エコノミクスのガブリエル・スターンは本誌に語った。

ブルームバーグによると、2023年満期のロシア国債の価格は現在、額面1ドルにつき29セント前後だ。この価格は「デフォルトするかその直前の他の新興国(の国債)と比べても極端に安い」と、スターンは言う。例えばザンビアは72セント、スリナムは69セント、スリランカは39セントだ。

「今やロシア債を買うのは、ルーブルでの利払いを受け入れるロシア人だけだろう。そういう奇特な買い手がいるとしたら、この価格ならお得な買い物と言えなくもない」と、スターンは付け加えた。

「ロシアにとってこれは屈辱的な事態だ」

世界経済も景気後退に突入?

ブルームバーグによれば、ロシア政府が抱えるドル建てとユーロ建ての債務残高は約490億ドル。その一部は今後何カ月かで利払い期限を迎える。

こうした状況をにらんで、ドイツの資産運用会社・DWSグループのジョージ・カトラムボーンも「(ロシアの)デフォルトのリスクは現実のものだ」とメディアに語った。ロシア債は買い手がつかず、事実上の取引停止状態だという。

ただ、西側企業が扱う新興国の債券市場インデックスファンドにロシア債が占める割合はわずかで、西側の金融機関はロシア債のリスクにほとんど影響を受けない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中