曲者ぞろいの論客を見事にさばく「アベプラの猛獣使い」、議論を成功に導く極意とは
アナウンサーなのでスタジオで話す仕事はもちろんありましたが、インタビューや記者会見などの取材も多かったんですね。特に記者会見では、取材する側がカリカリしてしまう展開になると、会見を開いている企業や組織にとっても損になる。仕切りのまずさが企業イメージを損ねていると感じる場面もあったんですね。発信の仕方にはファシリテーションの力が重要なんです。
私も、自分がファシリテーションをやってみる前は、こうした能力は暗黙知のように感じていました。でも意識してこのスキルを言語化していったら、「自分でもできる」と思ったんです。だからこそ、本書を読まれる方々には、僭越ながら「この本に書いてあることを真似してみてください」と言いたいのです。
それで本の内容をQ&A形式にしています。組織では、「ケンカになっちゃうんです」「全然話してくれないんです」といった悩みが常日頃湧いてきますよね。そうしてちょっと悩んだときに手に取っていただくことが、ファシリテーションのスタートになると思っています。便利なフレーズがたくさんあるのでそれを真似をするだけで本当に違ってきますよ。「おっしゃるとおりです」「そうですよね」といった言葉をファシリテーターが使うと、聴く姿勢が伝わるので本当に喜ばれます。
ただ、そうした言葉は、思いが乗った時に初めて意味をもちます。私のファシリテーションが「うまい」かはわかりませんが、私は「ポジティブな展開にしたい」「あなたのいいところを伝えたいんです」という思いをもって相手の前に立ちます。どんなにつれない対応をされても、こちらからは全面的に好意を寄せる。思いが先で、テクニックが効いてくるのはそのあとです。その姿勢はノンバーバルな部分にも滲み出る。思いがないと相手の心に刺さりません。
ポジティブジャーナリズムを広める
── ポジティブな場をつくる、というお話をしていましたが、平石さんはジャーナリズムの現場でもポジティブであることを大切にされています。平石さんが考える「ポジティブジャーナリズム」とはどのようなものですか? また、今後、ジャーナリストとしてどのようにお仕事を重ねていきたいですか?
平石:私が主に関わっているのはニュースなので、ここで議論されているテーマは深いか、表層的な部分で終わっていないか、ということに気をつけています。深いところまでファシリテーターが知っているからこそ、そのテーマでいままさに熱い部分まで、みなさんを早く連れていける。
報道でも、批判すべきは批判するという姿勢はありますが、批判することばかり探すという状態は違います。私たちの番組は、いまホットな問題に関わっている当事者を呼んで議論しますので、その人たちを傷つけるだけになってはいけません。一緒に問題について伴走して考えるという、ポジティブでフェアな姿勢を見せることが大事です。