曲者ぞろいの論客を見事にさばく「アベプラの猛獣使い」、議論を成功に導く極意とは
ファシリテーションは、会議や議論、チームに参加した人が、「その場を好きになって、また来たくなる」ためのものだと思っています。その場を円滑にするのは、やはり「うまく仕切ってくれる人」なんですね。ただ、気心の知れた、似たような人だけでは、面白いものを生み出すことはできないとも思っています。異質な、多様な価値観をもつ人が集まることで初めて、お互いに考え方をアップグレードしていける。ファシリテーターは、居心地のいいところだけにとどまらずに、多様な価値観を包摂するインクルーシブな場をつくる役割です。
ファシリテーターがいれば、それぞれの組織、チームの考えを背負って会議に参加してきた人たちでも融合しやすくなります。着地点を見つけて、全体としてはどこに向かって歩み寄れるのかを示すのが、ファシリテーターの仕事なのです。
人が集まる場をいかにエモーショナルで心地よいものにするか。3人以上集まった時にその場をいかに楽しく有意義な場にするか。その意識をつねに忘れないようにしています。
ポジティブに人に接する、話を聞く
── ごもっともと思う一方で、自分ができるかと考えると難しそうだなというのも正直な感想です。円滑にファシリテートしていくために、普段どのようなことを意識されているのですか?
平石:あの人はちゃんとそれぞれの発言を汲んでくれるから、自分も意見を言おうかな、と思っていただけるように動くようにしています。それと同時に、発言の一つひとつをポジティブに拾っていって、次につないでいくことを意識しています。点を線にしていくイメージですね。そこで生まれる関係、議論を一回で終わらせない。
「おっしゃるとおりです。この部分はチームにとっても必要ですよね」などとポジティブに拾っていくと、自分の言ったことはとても意味があったんだという気持ちになってもらえます。そうすると「また言いたい」「また行きたい」と思える場になっていく。そして、今回はここまで歩み寄れました、次回はこういう話ができるといいですね、というようにつなぐんです。それができるファシリテーターを軸にするとチームの力を最大にしていけます。その意味では、誰にファシリテーターを任せるかは組織にとっても重要な決断のひとつになるでしょう。
── ポジティブに拾っていくには、話を聴きながら要約していく力も必要ですよね。何かコツはありますか?
平石:私はこれまでの仕事のなかで、話のエッセンスを1分くらいにまとめて、大事な部分だけを瞬時に研ぎ澄ませる力を培ってきました。そこから一般的に言えるコツとしては、キーワードを逃さずに、むしろキーワードをこっちがつくっていくような思いで話を聴くことです。「いまとても大事なこと、『社会の分断』についておっしゃいましたよね」といったように、キーワードで話の輪郭がシャープになるので、発言した人も「それが言いたかったんですよ」となります。