「敵は炭素、内燃機関ではない」 トヨタがこだわる水素エンジンの現実味は
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トヨタ自動車の豊田章男社長はレースに参加した岡山県内のサーキットで、「敵は炭素であり、内燃機関ではない」と語った。11月13日、岡山県美作市で撮影(2021年 ロイター/Tim Kelly)
各国首脳が英グラスゴーで気候変動対策を議論した先週末、トヨタ自動車の豊田章男社長は岡山県内のサーキットで自動車レースに参戦していた。電気自動車(EV)が脱炭素を実現する車として唯一の選択肢ではない、既存の内燃機関を使った自動車なら業界に携わる数百万人の雇用を維持できると訴えるのが狙いだった。
さまざまな選択肢
豊田社長がハンドルを握ったのは、鮮やかにカラーリングされた「カローラ スポーツ」。小型車「GRヤリス」のエンジンを改造し、ガソリンの代わりに水素を燃料に使った水素エンジン車だ。実用化できれば、脱炭素化時代でも内燃機関を活かし続けることができる。
「敵は炭素であり、内燃機関ではない。1つの技術にこだわるのではなく、すでに持っている技術を活用していくべきだ」と豊田社長はサーキットで語った。「カーボンニュートラル(温暖化ガスの実質排出ゼロ)とは、選択肢を1つに絞ることではなく、選択肢を広げておくことだ」。
各国が地球温暖化対策で排ガス規制を強め、欧米や中国の自動車メーカーがEVに注力する中、トヨタはEV市場もこれから本格的に攻めつつ、水素技術にも取り組んでいる。
世界の新車市場に占めるEVの割合は3%未満とまだごく一部に過ぎない。しかし、国際エネルギー機関(IEA)によると、2020年は新型コロナウイルス感染拡大で新車市場全体が前年から約16%減少したにもかかわらず、EV登録台数は30.2%伸びた。外部充電可能なバッテリーと内燃機関の両方を積んだプラグインハイブリッド車も合わせれば、増加率は41%だった。
トヨタは25年までに15車種のEVを投入する予定で、30年までに電動車用の電池生産と研究開発に計約1兆5000億円を投資する計画を打ち出している。
19世紀の「電流戦争」再来
13日夜に閉幕した国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は、石炭火力の段階的削減に向け努力することを盛り込んだ「グラスゴー合意」を採択するとともに、米ゼネラル・モーターズとフォード・モーター、スウェーデンのボルボ、独ダイムラーAGのメルセデス・ベンツなど大手自動車6社が、40年までに世界で販売する新車をすべて「ゼロエミッション(二酸化炭素排出ゼロ)」化する声明に署名した。
ゼロエミッション化への移行は世界の多くの地域でまだ時間がかかることなどを理由に、トヨタは署名を見送った。販売台数で世界トップをトヨタと争う独フォルクスワーゲンも署名しなかった。
トヨタの早川茂副会長はロイターとのインタビューで、「われわれは『EV』を追求する会社ではなく、どの地域でも『環境に一番良い車』を提供する会社でありたい」と語った。国ごとに電源構成やインフラの整備状況、政策などが異なるとし、「その市場で一番プラクティカル(実用的)でサステナブル(持続可能性)でアフォーダブル(価格が手頃)なことが大事だ」と述べた。