欧米アパレルがアジア離れ コロナ禍のサプライチェーン混乱で生産シフト
欧米のアパレル大手やシューズメーカーが、生産拠点をアジアから欧米の店舗に近い地域へと移している。写真はセルビア・スメデレヴォの衣料品工場で4日撮影(2021年 ロイター/Marko Djurica)
欧米のアパレル大手やシューズメーカーが、生産拠点をアジアから欧米の店舗に近い地域へと移している。ベトナムと中国で今年、新型コロナウイルスのデルタ株感染が再発し、生産が数週間にわたって減少ないし停止したからだ。
世界的な物流の混乱とコスト上昇により、企業は世界に広がったサプライチェーン(供給網)と、アジアの低コスト製造拠点について見直しを迫られている。
クロックスなどシューズメーカーも生産拠点移動
スペインのファッション小売り企業・マンゴは5日、ロイターに対し、トルコ、モロッコ、ポルトガルといった国々での生産拡大を「加速」していることを明らかにした。来年には欧州での生産数を「大幅に」増やす方針だという。同社は2019年、製品の大半を中国とベトナムから調達していた。
米国の靴小売り企業・スティーブマデンも3日、ベトナムでの生産を減らすとともに、靴生産の50%を中国からブラジルおよびメキシコに移したことを明らかにした。サンダルの米クロックスは10月、インドネシアやボスニアなどの国々に生産を移しているとした。
衣料・靴メーカーの関心が高まっている国はこのほか、ブルガリア、ウクライナ、ルーマニア、チェコ、モロッコ、トルコなどだ。もっとも中国は、依然として欧米アパレルチェーン向け生産の大部分を担い続けている。
サプライチェーンのリスク管理会社、オーバーホールのバリー・コンロン最高経営責任者(CEO)は「旧ソ連諸国で貨物輸送、トラック輸送が大きく伸びている。ハンガリーとルーマニアでも大幅増加している」と述べた。
トルコのアパレル輸出は今年、欧州連合(EU)諸国からの発注が急増して過去最高の200億ドルに達する見通し。トルコ衣料品会議所のデータで明らかになった。昨年の輸出総額は170億ドルだった。
ボスニア・ヘルツェゴビナでは、今年上期の繊維、皮革、靴製品の輸出総額が7億3956万マルカ(4億3665万ドル)と、昨年1年間分を超えた。