温暖化対策で企業が出張削減 対応迫られる航空業界
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大企業が、出張に伴って発生する二酸化炭素排出量を大幅に削減する方法を模索する中で、航空各社はドル箱であるビジネスクラス利用が大打撃を受けるのではないかと身構えている――。写真はイエメン・サヌア上空を飛ぶ飛行機。2011年1月撮影(2021年 ロイター/Khaled Abdullah)
大企業が、出張に伴って発生する二酸化炭素排出量を大幅に削減する方法を模索する中で、航空各社はドル箱であるビジネスクラス利用が大打撃を受けるのではないかと身構えている――。このような状況が、業界幹部や専門家の発言から見えてきた。
HSBC やチューリッヒ保険 、ベイン・アンド・カンパニー、S&Pグローバル など複数の企業は、出張に伴う二酸化炭素排出量の最大70%を早期に削減する計画をすでに発表済みだ。
気候変動につながる間接的な二酸化炭素排出量を削減するよう環境保護団体や投資家からのプレッシャーが高まる中、「カーボン予算」の導入を検討する企業もある。
出張にともなう二酸化炭素排出量の約90%は航空機での移動によるものだ。したがって、削減目標を設定しようという企業が真っ先に手をつけるのも、この部分ということになる。
航空産業の側では、先週ボストンで開催された会合において、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」の目標を打ち出した。だがこれでは、企業が出張に伴う排出量の削減目標を達成する時期よりも数十年先になる。
「航空会社には厳しい状況であり、対応していく必要がある」と語るのは、ロンドンを本拠とするスラスト・カーボンの共同創設者であるキット・ブレナン氏。スラスト・カーボンでは、S&Pをはじめとするクライアントに「カーボン予算」に関するアドバイスを提供している。
ブレナン氏は、「とても奇妙な話だが、これから生じると思われるのは、ビジネスクラスとして与えられる特典が座席とは関係なくなるという、ビジネスクラスの別売りが進むことだ」と述べる。特典とはつまり、空港のラウンジや食事のグレードアップなどだ。「結局のところ、二酸化炭素排出量の問題は、ビジネスクラスの座席が航空機内でどれだけの面積を占めているかということだから」
世界銀行が行った研究によれば、旅客機で移動する場合、ビジネスクラスを利用するとエコノミークラスより最大で約3倍の二酸化炭素を排出することになる。ビジネスクラスの座席はそれだけ多くの面積を占め、空席率も高いからだ。
すでに始まった変化
国際航空運送協会(IATA)によれば、パンデミック前、世界全体の国際航空旅客のうち約5%がエコノミーより上のクラスで、国際航空収益の30%を占めていた。
パンデミックに関連して出張が減少しオンライン会議へと移行した結果、多くの企業が、出張方針の再設定によるコスト削減を実現した。
コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーで持続可能性(サスティナビリティー)最高責任者を務めるサム・イスラエリット氏によれば、ベインではオフィスや業務対象地域におけるカーボン予算の評価を進めており、今後5年間で出張に伴う従業員1人あたりの二酸化炭素排出量の35%削減につなげようとしているという。