最新記事

中国経済

中国当局、景気減速でも不動産規制を堅持 実行面で微調整も

2021年10月17日(日)10時57分
北京の住宅建設現場

中国の政治指導部は、長引く不動産バブルが長期的な経済成長基盤を損なう事態を懸念しており、たとえ景気が減速していても、不動産セクターを厳しく規制する基本方針を維持する公算が大きい。ただ、実行面で手綱が多少緩められる可能性はある――。これが政策関係者や専門家の見方だ。1月、北京の住宅建設現場で撮影(2021年 ロイター/Tingshu Wang)

中国の政治指導部は、長引く不動産バブルが長期的な経済成長基盤を損なう事態を懸念しており、たとえ景気が減速していても、不動産セクターを厳しく規制する基本方針を維持する公算が大きい。ただ、実行面で手綱が多少緩められる可能性はある――。これが政策関係者や専門家の見方だ。

彼らの話を聞くと、習近平国家主席は短期的な痛みが増すことをいとわず、直近に導入した一連の不動産規制を断固推進する構えに見える。この姿勢は、経済成長がおぼつかなくなった段階で規制が骨抜き状態になりがちだった過去の対応とは、まるで違っている。

習氏の決意は、中国経済の不動産セクターに対する依存を減らし、各種資源をハイテクなど新しく台頭してきた分野に振り向け、成長をけん引させようという長期的な構造改革に政府が取り組んでいることに根ざすものだ。

ただ、他の産業が急拡大しているとはいえ、不動産は建設など関連セクターを含めると、なお国内総生産(GDP)の25%強を占める。

その中国経済は、新型コロナウイルスのパンデミックから目覚ましい回復を見せたものの、足元で失速の気配が漂う。

不動産規制のほか、原材料不足、供給網の混乱、消費低迷といった悪材料に加え、最近は幅広い地域での電力不足という逆風まで吹いている。

また、不動産開発大手、中国恒大集団が3000億ドル余りの債務を抱えて経営危機に陥ったため、中国では不動産セクター発の信用リスクが経済のより幅広い範囲に影響を及ぼすのではないかとの懸念が、海外でも強まってきた。

経済政策面で習氏の側近ナンバー1である劉鶴副首相は繰り返し、金融リスクの危険性を警告。銀行保険監督管理委員会主席と人民銀行(中央銀行)の共産党委員会書記を兼務する郭樹清氏は、不動産を「灰色のサイ」と描写している。灰色のサイとは、高い確率で問題が起きることが分かっていながら軽視されている事象を指す。

指導部内の政策議論に関係しているある人物は「不動産規制は痛みを伴うだろう。しかし、これは成果を得るために必要な対価なのだ。過去を見ると、われわれは経済の下振れが原因で常に規制を緩和しているが、今回の指導部の決心は非常に固い様子だ」と明かした。

「三道紅線」

これまで中国では、何年にもわたってさまざまな不動産価格の抑制策が講じられてきた。だが、住宅価格は手の届かない水準に跳ね上がり、出生率を上げて少子高齢化と人口増加率の鈍化に対処しようとしている政府の足を引っ張っている、と専門家は解説する。

そこで、昨年8月に当局が規制を強化。人民銀行は不動産開発会社の債務動向を監視・管理する手段として「三道紅線(3つのレッドライン)」と呼ばれる措置を導入し、借り入れ制限や債務リスク抑制に乗り出した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中