中国企業に押し寄せる習近平の規制強化の嵐 「容赦ない締め付け」に懸念
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中国で吹き荒れる規制強化の嵐は、行き過ぎを抑えるという名の下に多大な企業価値を消失させた。これは強権的な姿勢に拍車がかかってきた習近平国家主席体制における政策リスク自体だけでなく、そうした政策がこれまでよりずっと厳しく本当に実行されるのではないかとの懸念も浮き彫りにしている。写真は習近平国家主席(右)と胡錦濤前国家主席。2017年10月、北京の人民大会堂で撮影(2021年 ロイター/Jason Lee)
中国で吹き荒れる規制強化の嵐は、行き過ぎを抑えるという名の下に多大な企業価値を消失させた。これは強権的な姿勢に拍車がかかってきた習近平国家主席体制における政策リスク自体だけでなく、そうした政策がこれまでよりずっと厳しく本当に実行されるのではないかとの懸念も浮き彫りにしている。
巨大ITプラットフォーム企業からビットコイン関連業者、配車サービス大手の滴滴出行(ディディ)、教育産業に至るさまざまな締め付けは、何十年も追求してきた全力を挙げての成長率引き上げよりも、一般の人々に広く繁栄を享受させるとする道を習氏が優先する中で、歴史的な政策転換が起きたことを意味する。
新たなルールや規制が猛烈なペースで、しかも容赦なく、時には予測不能な力の行使によって導入され、企業や市場を混乱に陥れている。しかしながら投資家は逆風がさらに強まるのを覚悟すべきだ、というのが専門家の警告だ。
ローウィー・インスティテュート(シドニー)の上席研究員リチャード・マクレガー氏は「以前の指導者が行った取り締まりは、ほとんど効果がなかったという点で今と違いがある」と語り、習氏の方がずっと権力が大きく、何らかの政治キャンペーンを始めれば官僚たちは熱心に実行するため、影響は世界全体に及ぶと説明した。
前任の国家主席だった胡錦濤氏の権力がどの程度だったかを表す上で有名なのが「政治は中南海を出ない」という言葉だ。これは2014年の共産党機関紙、人民日報に引用され、胡氏の権力基盤の相対的な弱さを言い当てていた。また「党中央からすっきり晴れ渡った政策が出されても、各省に着くころには雲行きが怪しくなり、郡部で雨になって村々を水浸しにする」と、政策が狙い通りに行われないことを皮肉る言い回しもあった。
対照的に習氏は、中国指導者としては毛沢東以降で最も権力があるとの見方が多い。専門家は、その「威光」によって政策が徹底的に実行され、網の目のように広がる官僚機構によってさらに強められていると話す。当然、下僚が上役の覚えをめでたくするため、やり過ぎてしまうリスクも出てくる。
先週には、不安を感じた投資家が国営メディアの報道や政府のウェブサイトに目を凝らし、次に規制の標的になる業種や企業はどこかを探ろうとする中で、電子たばこ、化学、成長ホルモン、酒造といった銘柄が売り込まれた。これに先立ち、ある国営紙がオンラインゲームを「精神的アヘン」と批判すると、規則がまったく変更されていないにもかかわらずゲーム関連株が売りを浴びる展開になった。
トップダウン
ディディの場合、ニューヨーク市場に上場した数日後にデータの取り扱いを巡って調査や処分が実施され、中国の規制面の不透明感があらわになった。この動きは投資家をすくみ上がらせ、海外上場を考えていた幾つかの中国企業は、それが中国政府に許されるかどうか見極めるため計画を棚上げした。
逆に営利目的の学習塾産業を打ちのめした予想外に厳格な規制措置は、当初から中身が具体的だったが、最初に登場したのはソーシャルメディアに出回った文書の中。国営メディアによって確認されたのはその翌日だった。教育産業への取り締まりでは、黄山市当局は先月、違法な指導をしていたとして教師を拘束するため高級住宅地に踏み込んだ。政府の「ポルノ・違法出版物一掃」全国弁公室の湖北省の複数支部もそうした類いの行動に出て、一部ネットで教職への侮辱との批判が上がったほどだった。