中国企業に押し寄せる習近平の規制強化の嵐 「容赦ない締め付け」に懸念
カリフォルニア大学サンディエゴ校のビクター・シン准教授は、このトップダウン方式の取り締まりは国有企業や関係省庁、専門家らの意見を取り入れる協議の手順をおざなりにしてしまっていると分析。「協議手順自体は残っているものの、スピードがずっと早まっているように感じる」と述べ、その裏返しで利害関係者が大きな驚きに見舞われ、彼らの中期的な利害への配慮がないまま政策が打ち出される恐れがあるとの見方を示した。
ニューヨーク大学法科大学院のウィンストン・マ客員教授は、投資家が油断していたとみている。「一部の外国人投資家は中国の法体系を真剣に取り合ってこなかった。彼らは各種規制がこんなにすぐに出てくるとは想定していなかったし、たとえ出てきても厳しく実行されはしないと考えていた」という。
フィッチ・レーティングスは10日、今後は中国に対し、商業的な利害関係者に確実性と信頼を届けられるよう政策変更の優先順位を付けて説明することが求められ、経済的な混乱を最小限にするよう迫る圧力が強まると指摘した。遠慮会釈なしに政策を実行し、木で鼻をくくったような対話の態度に終始すれば、海外の投資家が中国の証券購入に際して要求する規制リスクのプレミアムは増大しかねないと主張した。
自己修正能力
中国当局も、高圧的な姿勢での政策実行がどんな影響を及ぼすかは認識しているようだ。
営利目的の学習塾禁止が株価下落を引き起こしたことを受け、中国証券監督管理委員会は外国投資銀行の幹部と話し合いの場を設け、不安を和らげようとした。
最近では共産党指導部が、温室効果ガス排出量削減を政治キャンペーン的に進めようとする地方政府の方針について是正する意向を発表している。
杭州を拠点とするウォーター・ウィズダム・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ユアン・ユウェイ氏は、これまでは中国政府が望ましくない結果が出た場合に政策修正に時間がかかっていたのに反して、現在の政策転換が素早いことに驚きを見せる。「3月から排出量削減政策が大きく踏み込んだものになり、これがコモディティー価格高騰の引き金になった。この失敗には迅速に対処がされた。集中的な権力は、自己修正システムがある限りは有効に機能する。だが、自己修正が遅ければ、問題は起きる」と警告した。
(Andrew Galbraith記者)
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