ビットコインで「資産を守れる」は本当? インフレの「経済論戦」から考える
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<インフレ懸念が高まっているが、そもそも世界はなぜインフレに怯えるのか?【インフレと仮想通貨論(前編)】>
米国経済が新型コロナから立ち直る中、インフレ懸念が再燃しています。日本ではインフレに対して危機感を持つ人は多くないようですが、米国が牽引する形で世界的にインフレが加速する可能性があります。
インフレとは簡単に言えば、円やドルなど法定通貨の購買力が低下することを意味します。しかし、理屈では分かっていても、現代の多くの市場参加者は不健全なレベルのインフレを実際に体験していません。インフレ率が高まるその時に備えて、私たちは自分のお金をインフレからどのように守れば良いのでしょうか?
本稿では、そもそもインフレはなぜ起きるのか? どうやって測るのか? といった基本的な解説をした後、「インフレは有害なのかどうか」をめぐる経済学における有名な主張──ケインズ学派とオーストリア学派の主張を紹介します。
そして、インフレから自分の資産を守る方法として金や不動産など伝統的な資産と並んでなぜビットコインが有力なのか、という疑問に迫ります。
インフレとは何か?
インフレーション(略してインフレ)とは、モノ・サービス価格の上昇により法定通貨の購買力が低下することを指す経済用語です。インフレ率とは、一年間に平均的な世帯の生活費がどのくらい増えたかを測る指標であり、具体的には電気やガス、日々の食材の価格が過去と比べてどのくらい上昇したかを測ります。
一般的にモノ・サービスの価格は、他の条件が一定であれば、需要と供給の関係で決まります。ここでいう需要とはマネー供給量と同義であり、その増加がモノ・サービスの価格上昇要因となります。
インフレは、適切にコントロールされている場合は、無害に見えます。しかしコントロール不能になると経済に対して壊滅的な影響を与えます。アメリカのロナルド・レーガン元大統領は、かつてインフレについて「追い剥ぎと同じくらい乱暴で、武装した強盗と同じくらい恐ろしく、暗殺者と同じくらい致死率が高い」と表現しました。
以下の表は、最近の法定通貨とビットコインのインフレ調整済みの購買力を比較しています。過去10年ほどで、ドル、ユーロ、ポンドという主要な法定通貨の購買力が軒並み低下したのに対して、ビットコインは大幅に上昇したことが分かります。