テスラが自動運転機能からレーダー削除 安全犠牲のコスト削減か議論に
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米電気自動車(EV)大手・テスラが半自動運転機能「オートパイロット」からレーダーセンサーを削除すると発表したことが、波紋を呼んでいる。カリフォルニア州サンタクラリタで2019年10月撮影(2021年 ロイター/Mike Blake)
米電気自動車(EV)大手・テスラが半自動運転機能「オートパイロット」からレーダーセンサーを削除すると発表したことが、波紋を呼んでいる。
テスラはカメラのみで構成するシステムを目指す方針だが、業界内では暗闇やぎらつき、悪天候といった環境で有効に機能するのか懸念する声が多い。安全性評価団体は新システムをテストするまでの間、評価を引き下げた。
ただ、テスラのマスク最高経営責任者(CEO)はこれまでも業界を驚かせており、何よりテスラを世界で最大の企業価値を誇る自動車メーカーに育て上げた実績を持つ。
テスラがレーダー不使用に踏み切った経緯や、安全性を巡る問題点をまとめた。
テスラの自動運転システム
テスラは5月から「モデル3」と「モデルY」の運転支援機能について、8つのカメラで構成し、レーダーを装備しない仕組みとした。カメラはヒトの「目」と同じように、「脳」に当たるコンピューターネットワークに映像を送信。脳が映像を認識し、分析する。
テスラは、レーダーに対する見解がこの数年で変化してきた。
2016年5月にはテスラ車のオートパイロットが前方を横切る白いトレーラーを感知できず衝突し、運転者が死亡する事故が起きた。
その後、テスラはナビゲーションシステムの柱にレーダーを据える計画を発表したが、同時に一部のレーダーシステムは誤認警報を発する不具合があり、修正が必要だと指摘。
マスク氏は16年、ツイッターに「レーダーの良いところはLiDAR(ライダー)とは違い、雨や雪、霧、粉塵などが降っていても先を見通せることだ」と投稿し、テスラもレーダーは「前方の物体の把握と反応で重要な役割を担う」と説明した。
LiDARはレーザー光を駆使して対象物の形状や対象物までの距離を計測する光センサー技術。レーダーに比べて、物体についてより正確な情報を伝えるが、コストは高く、テスラは採用していない。
テスラの運転者からは、オーバーパス(陸橋などとの交差地点)や橋などを走行中に車が突然停止する「ファントムブレーキング」が起きたと苦情も寄せられた。