テスラが自動運転機能からレーダー削除 安全犠牲のコスト削減か議論に
ニュースサイトのエレクトレクによると、マスク氏はカメラだけで構成する新システムについて、混乱を引き起こす信号が少ないため、レーダーよりも安全だと述べた。
テスラ車は16年5月以降も似たような状況で事故の発生が相次ぎ、米道路交通安全局(NHTSA)は現在、テスラ車が関係した24件の事故について調査を進めている。
自動運転の他の安全技術
ほとんどの自動車メーカーと自動運転車企業は、カメラ、電波を用いるレーダー、光センサーのLiDARの3つの技術を使っている。
レーダーシステムはカメラと同様にコストが比較的低い。悪天候下で機能するが、物体を正確に認識する解像度が低い。LiDARは解像度が高いが、悪天候に弱い。
カーネギー・メロン大学のラジ・ラジクマール教授(コンピューター工学)は「種類の違うセンサーを全て使い、それを統合する必要がある」と指摘。これが業界関係者の一致した見方だ。
テスラの人工知能部門ディレクター、アンドレイ・カーパシー氏は3月のポッドキャストで、テスラのカメラシステムは「設計が非常に難しい」が、LiDAR技術を使ったウェイモのシステムより「コストはかなり安く」、EVメーカーはこの技術を広げ、さらに進化させることができると述べた。
レーダー不採用の影響
この点を巡り議論が噴出している。
カリフォルニア大学バークリー校の研究者、スティーブ・シャルドバー氏は、レーダーの削除で運転支援機能が低下し「悪天候下では『利用度が低い』という状態から『利用不可能』になる。技術的にはどう見てもばかげている。部品のコストを下げるための1つの手段に過ぎない」と手厳しい。
レーダーメーカーであるアーブ・ロボティクスのラム・マチネス最高事業責任者は、レーダーは距離を正確に測る機能が優れており、削除すれば減速中の車との衝突を回避する緊急ブレーキに影響が出ると主張。運転支援システムを開発するテラノンは、ツイッターに「レーダーを削除し、レーダーの役割を担う映像がなければ、安全性が犠牲になる」と投稿した。
テスラは、前方の車に合わせたスピードを保つ技術など一部の運転支援機能が一時的に制限されたり、停止したりする可能性があるが、数週間以内にはソフトウエアをアップデートし、再開するとしている
マスク氏はエレクトレクで、カメラによるシステムは非常に性能が向上しており、レーダーなしでも問題はないとの認識を示した。
NHTSAは先に「モデル3」と「モデルY」の運転支援機能の一部について、安全面の推奨を示す「チェックマーク」が外れると発表。米有力専門誌「コンシューマー・リポート」もモデル3は最高推奨対象ではなくなると表明した。NHTSAとコンシューマー・リポートはいずれもカメラを使った新システムをテストする意向だ。
何が最良かは不明
テスラの方針は、自動運転業界の大勢に反している。しかし、誰が正しいのかを断言するのは難しい。完全な自動運転機能はまだ開発されておらず、業界全体が当初の見通しを示すのは何年も先のことだ。
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