テスラ、総工費7700億円超を投じたドイツ「ギガファクトリー」の迷走
マスク氏は最近では5月にグリューンハイデを訪れており、「官僚主義が薄れれば、事態は改善されると考えている」と述べた。8カ月前に「ドイツは最高だ」と熱を込めて語ったときに比べると、明らかにトーンダウンしている。
バッテリー用セルの生産も
テスラの工場建設計画は、バッテリー用セル製造ラインの追加を反映させるため、6月初めに全面的な再申請を余儀なくされ、貴重な数カ月を失ってしまった。
グリューンハイデ工場は部品製造、完成車の組立てを担う複数の部門で構成されており、プレス、鋳造、車体製造といったラインが含まれている。
また、水再処理施設、構内消防隊、部品その他物資の輸送効率を改善するための集積所なども含まれている。計画によれば、敷地内の電力需要は地元の再生可能エネルギー源で賄われるとされている。
だが、バッテリー用セル製造を追加したことにより、テスラは申請全体を修正・再提出する必要に迫られた。最新の申請内容によれば、同工場では年間合計50ギガワット時(GWh)に相当する5億セルを生産する能力を持つことになる。
これは、ライバルのフォルクスワーゲンが、約300キロ西にある本社に近いザルツギッターで計画している40GWh相当の生産施設を上回る規模だ。
マスク氏以外に支持する声は?
ある。
テスラの動きは、高い失業率と大規模工場の誘致の難航という悩みを抱える旧東ドイツ地域にとって、大きな追い風だと考えられている。
フル稼働の状態に至れば、テスラが「世界で最も先進的な電気自動車の大規模生産プラント」と称する同工場は、1万2000人以上の雇用を生み出し、年間最大50万台を生産すると予想されている。
グリューンハイデに隣接するエルクナーで活動する緑の党党員のラルフ・シュミレウスキー氏は「私たちはクリーン・モビリティ(排出物ゼロの交通・移動手段)へのシフトを支持しているし、その実現に必要な自動車はどこかで製造されなければならない」と語る。
シュミレウスキー氏によれば、何とかして就職したいと願う若い世代は構造的に弱い同地域を離れるようになっており、テスラの計画はこうした人口動態面での問題にも対処するものだという。
「将来の展望が生まれ、地元を去る必要がなくなっている」と同氏は語る。
今後の展開は?
一般市民は7月中旬まで、グリューンハイデ市役所で、設計図や図表、計算式を含め約1万1000ページに及ぶテスラの申請書類を閲覧できる。開示されるのはこれで3度目だ。
開示プロセスの一環として、8月16日までは誰でも異議申立てを提出できる。その後ブランデンブルク州農業・環境省は、9月13日に公聴会を開催するか否かを決定する。
前回、2020年に申請書類が開示されたときは、400件以上の異議申立てが出された。
その後の展開については明確なスケジュールはない。いずれかの時点で同省は最終許可を与えるとみられるが、その時期は何とも予想がつかない。
(Nadine Schimroszik記者、Christoph Steitz記者、翻訳:エァクレーレン)
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