原材料と流通費の高騰に円高まで、日本企業にコスト増の三重苦 価格転嫁できず利益圧迫懸念
世界的な原料高と輸送費の高騰、さらに円安が追い打ちをかけ、食品をはじめとした輸入型の製造業がコスト上昇圧力に直面している。写真はアルゼンチンでの大豆の収穫作業の様子、2020年4月撮影(2021年 ロイター/Agustin Marcarian)
世界的な原料高と輸送費の高騰、さらに円安が追い打ちをかけ、食品をはじめとした輸入型の製造業がコスト上昇圧力に直面している。3月の日銀短観によると、大企業は先行き仕入れ価格の上昇を見込む一方、販売価格は横ばいが続くとみていた。すべての企業がすぐに価格転嫁できるわけではなく、収益圧迫を懸念する声も出ている。
植物油は値上げ
厳しいコスト環境に晒(さら)されている業界の1つが植物油。日清オイリオグループや昭和産業は、原料となる大豆、菜種、パーム油などの価格が上昇しているとして、2021年に入ってすでに2度、商品の値上げを発表した。日清オイリオは4月1日納入分から家庭用食用油を1キログラム当たり20円以上引き上げ、6月1日納入分からは1キロ当たりさらに30円以上引き上げる。
業界関係者によると、大豆は米国産が2020年夏の天候不順、アルゼンチン産が20━21年の高温乾燥で生育状況が悪化したこと、パーム油は収穫期に新型コロナウイルスの感染拡大で収穫作業等の労働者が不足したことなどで供給の制約を受けた。一方、いち早くコロナ禍から回復した中国の旺盛な需要により需給が引き締まり、20年後半から価格が上がり始めた。シカゴ市場の大豆先物は、この1年で6割上昇した。
植物油の製造コストを押し上げているのは原料だけでない。昭和産業が3月に今年2度目の価格改定を発表した際、同社は海上運賃の上昇や為替の円安傾向も理由に挙げた。
中国向けに穀物、鉄鉱石、石炭などの輸送が活発化し、ばら積み船の運賃が上昇。バルチック海運指数は昨年4月上旬の616ポイント付近から現在2072ポイントと3.3倍に上昇している。
とりわけ需給が逼迫しているのがコンテナ船。上海航運交易所が算出する上海コンテナ運賃指数(SCFI)は、昨年4月上旬の890ポイント付近から現在の2580ポイント台まで3倍近くまで跳ね上がった。
岡三証券のシニアセクターアナリスト、山崎慎一氏は「米政府の積極的な財政出動で米国経済の回復が促進されるとの見方が広がり、アジアから米国へ消費財の輸出が増えた。コンテナが米国に偏在し、アジアの空きコンテナが不足。北米の港湾の混雑なども重なり、輸送料金の上昇につながっている」と指摘。エジプトのスエズ運河で起きた座礁事故により、コンテナ船の輸送料は高止まりする可能性があると話す。