原材料と流通費の高騰に円高まで、日本企業にコスト増の三重苦 価格転嫁できず利益圧迫懸念
外為市場では、年初102円台だったドル/円が日米金利差の拡大を意識する形で110円台まで上昇し、1年ぶりのドル高/円安水準となった。巨額の財政出動で米景気が急速に回復しており、米国に資金が集まりやすい状況となっている。
為替のディーリング業務に30年以上携わってきたメガバンク関係者は「長い目でみると、今年の動きは悪い円安の出発点かもしれない」と話す。輸出産業の代表格である自動車メーカーが減産を検討するような現状で、為替の円安が日本の経済全体にとっていいことなのか」と、同関係者は言う。
中国の旺盛な需要
コスト上昇圧力がかかるすべての企業が、植物油のように価格転嫁できるとは限らない。日銀が1日に発表した短観3月調査によると、製造業では大企業、中小企業いずれも仕入価格判断で先行き上昇が見込まれる一方、販売価格判断の先行きは横ばいと小幅上昇で、価格転嫁が十分に進まない構図がみられた。新型コロナの不確実性が高く、企業が値上げに慎重な姿勢であることがうかがえた。
大豆と同じく国際商品の小麦は、今年3月までの直近6カ月、米国やカナダ産に対する中国の旺盛な買い付けや、ロシアの輸出税の引き上げ、さらに米国中西部の寒波による小麦生育への影響懸念などで値上がりした。
小麦の9割を外国産に頼る日本では政府が国家貿易で計画的に輸入し、需要者に売り渡している。農水省は直近6カ月間の平均買付価格を基に年2回の価格改定を実施しているが、21年4月期からの売渡価格は20年10月期と比べて5.5%引き上げた。
製粉企業は、国から購入した小麦を製粉工場で業務用の小麦粉に加工し、パンや麺などを製造する二次加工メーカーに販売している。この際、政府の売渡価格を反映して小麦粉価格を上下させる。製パン業界の関係者は「原材料高によるコスト上昇分を引き受けるケースも少なからずある」といい、収益への影響を懸念する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの研究員、丸山健太氏は「まだ需要の弱さが残っている」と指摘。その上で「ここから先、ワクチンや特効薬などで感染症をコントロール下におければ販売価格への転嫁が進むだろうが、そうでなけば企業としても苦しい状況が長引く」とみている。
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