コロナ対策で溢れたマネーは富裕層だけ潤す 「低成長バブル」で際立つ日本の二極化
一方でフードバンクの提供が2倍に
同総研コンサルティング事業本部の宮本弘之・パートナーは、コロナ禍にさらされた20年は富裕層の金融資産が一段と増えていると指摘する。その上で、「過去のバブル期には国民の多くが同じような方向を向いていたが、今はそうではない。差が開いている。明暗はバブルの最中にあってもすでに生じている」と話す。
コロナの感染拡大で休業や失業を余儀なくされた業界の従事者たちを中心に、多くの人にとって資産バブルは縁遠い話だ。東京足立区では、生活資金の相談件数が昨年末に前年比で3割増にのぼり、同区のハローワークでは失業給付申請件数が今年1月に3割増えた。日本最大のフードバンク「セカンドハーベスト・ジャパン」によると、個人向けの無償提供件数はコロナ前の2倍以上に増加した。
日銀内からも、金融緩和の長期化が所得の再分配に何らかの影響を及ぼすことは排除できないとの声が聞かれる。一方で、金融緩和がなければ景気がより悪化していた可能性があるとして、プラスマイナス差し引きで考えないと公平な評価にならないとの反論の声もある。
コロナの経済対策として財政支援を進めてきた財務省の関係者は、「コロナ禍でふたを空けてみたら格差が拡大しているのではないか、持てるものと持たざるもの差が広がっているのではないか、それは日本だけでなく世界的のもの、という指摘はある」と話す。「その中で困った人に手を差し伸べる、ということをやっている。給付金にしてもある程度そういう趣旨はあると思う」と語る。
アルトコインで元手が16倍に増えた冒頭のTDさんは最近、デジタル資産の一種である「NFT(非代替性トークン)」を購入した。TDさんは、ITへの関心と知識次第で、これからも資産格差が広がる時代になると話す。
第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストは、世界の中央銀行が供給するマネーによる資産効果や景気刺激は今後も過剰気味に継続するとみる。「それをうまく利用できる人達は濡れ手で粟(あわ)、利用できない人々は副作用だけを被ることになる」と語る。
(中川泉 杉山健太郎 編集:久保信博)
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