コロナ対策で溢れたマネーは富裕層だけ潤す 「低成長バブル」で際立つ日本の二極化
象徴的なのが、高級腕時計のロレックス。人気モデルは新品が手に入らず、転売目的が多い中古市場で定価の2ー3倍に当たる300万ー400万円で取引されている。日本ロレックスによると、世界中で人気モデルの引き合いが強く、商品の提供が需要に追い付かないという。
高級別荘地として知られる長野県の旧軽井沢地区では、昨年秋に東急リゾートが売り出した「億ション」が半年ほどで完売した。建物はもちろん、モデルルームさえまだ存在しなかったが、広さ90ー185平方メートル、1億─2.5億円程度の物件は抽選になるほどの人気を集めた。
実体経済からかい離し、株や不動産、その他の現物資産が膨張する光景は、30年前に日本が経験したバブル景気と重なる。当時は円高不況を乗り切るための金融緩和マネーが投資や投機に回り、日経平均株価は4万円に迫った。今回も株価はそのとき以来となる3万円台に乗せ、当時の水準を回復しつつある。
富裕層は濡れてに粟で格差拡大
しかし、30年前のバブル期と今とでは大きく異なる点がある。1986年から91年の実質成長率は年5%を超え、日本中が好景気に沸いた。一方、戦後2番目に長い景気拡大を記録した2012年から18年の成長率は年1%強。コロナが直撃した20年は4.8%のマイナス成長となった。低成長の中で資産価格だけが膨らみ、限られた「持てる者」だけが恩恵を受けている。
「89年ごろのバブルは日本経済がまだ成長していた。今は人口が減少している中でお札だけ増えている。過剰流動性相場だ」と、前出の倉田社長は話す。
日銀の資金循環統計を見ると、昨年12月末の家計の金融資産残高は1948兆円と過去最高を大きく更新。野村総合研究所によると、資産1億円以上の富裕層の純金融資産(金融資産から負債を差し引いたもの)は19年に333兆円と全体の2割を占め、17年から11%増加した。一方、全体の8割を占める3000万円未満は17年より世帯数が増える一方で、純金融資産は減少した。リーマン危機後から続く過剰流動性で、コロナ前から格差は拡大していた。