2020年のマンション市場と今後の動向──コロナ禍で高まる需要、今マンションは買うべきなのか
以上まとめると、マンション需要は今後も引き続き強いと見られ、マンション市場の需要超過はしばらく続くと予想される。新築マンション用地の取得価格の高さから、今のところ、リーマン・ショック前のように、セカンドブランドのマンションが供給される可能性も低い。新築も中古も上昇を続けているマンション価格であるが、今後も価格の上昇傾向は続くであろう。
マンションの面積・単価の動向と、住宅ローン減税制度の変更
不動産の価格を見る際には、総額に加えて、単価についても必ず確認する必要がある。
長谷工総合研究所の調査によると、改正前の2020年までの首都圏の平均総額と平均単価を見てみると、どちらも年々高くなっている(図表9、10)。一方で1戸当たりの平均面積は小さくなっている(図表11)。つまり、今のマンションの購入価格は、単価の上昇がプラスに、面積の縮小がマイナスに作用しているが、単価上昇がより大きいため総額も上昇している。
マンションの価格は、「面積」だけではなく、「立地」、「設備」、「間取り」など、様々な条件に応じて価格が決まる。例えば、多少面積が狭くても、より良い設備が付属していれば、その物件を選択する人も多いのではないだろうか。つまり、「縮小した面積」というマイナス条件を、他のプラス条件で拡充して競争力を保ったことで、「平均総額」と「平均単価」が高まっていると見ることができる。
また、2021年度の住宅ローン減税等では、合計所得金額が1000万円以下であれば、対象物件の規模が40m2以上に緩和される(図表12)。2020年までの同制度の対象規模は50m2以上であり、50m2未満の住宅は、住宅購入による減税のメリットを受けることができていなかった。新築の40m2であれば、間取りは1LDKとなることが多い。ターゲット層はDINKSや一人暮らしであり、新たな需要を掘り起こすだろう。また、この制度改正は、小規模の住宅需要の高まりを呼び、40m2以上、50m2未満の住宅に対しても、面積の縮小を他の条件で補完する動きを広げ、全体的な価格の上昇傾向を促進するのではないだろうか。
マンション市場にマイナスの影響を与える要素は
では、現在の市況にマンション価格を引き下げるように作用する要素はあるだろうか。
まず、供給者は資金調達が容易にできる状況であり、投げ売りが生じるような事態は想像できない。また、コロナ禍によっても住宅ローンの審査は厳格化しない2と見られ、購入希望者の資金調達が困難となり、需要全体が大幅に減少して、価格が崩れるということも想定しづらい。
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2 渡邊布味子『住宅ローン審査はコロナ禍でも厳しくならない-無理をして借りる人も増加、計画は慎重に』ニッセイ基礎研究所 不動産投資レポート、2020年8月31日