2020年のマンション市場と今後の動向──コロナ禍で高まる需要、今マンションは買うべきなのか
しかし、コロナ禍により実体経済が傷んでいるのは確かであり、一部企業の業績悪化や働く人々の所得にまで影響が及んできている。なかでもボーナスや時間外手当は企業業績悪化の影響を受けやすい。リーマン・ショック前後とコロナ禍前後の賃金の推移を比べてみると、コロナ前後のほうが時間外手当がより急速に減少している(図表13,14)。ボーナスカットや時間外勤務が減少すれば、所得減少の割合とほぼ同じ割合で住宅ローンの借入可能額が減少し、需要者の予算も減少する。このため、マンション市場の一部では需要が減退する可能性がある。
ただし、マンション供給量が少ない現在の市場では、ある需要者が購入できないとしても、別の需要者が購入する可能性は高い。潜在的なマンションの購入者層には今回のコロナ禍でも収入にあまり影響のない人も数多く存在すると考えられるため、現在のマンション市場においては、一部の需要者の年収低下が全体のマンション価格の下落に及ぼす影響はあまり大きくないのではないだろうか。
数年以内にマンションが欲しいのであれば買ってもよい
新築マンションも、中古マンションも、現在は超売り手市場といってよい。価格は高値水準であるが、新築マンションの供給調整は続くと思われ、また中古マンションの供給も限定されている。当面はこの価格水準が維持されると思われ、さらに上がる可能性もあるだろう。
今マンションを買うとしたら、人気のある物件は早い者勝ちとなり、価格も下がりにくい可能性が高い。数年のうちにマンションを買いたい、と考えているのであれば、気に入った物件があれば買ってしまうのも一つの考えであろう。
なお、中古マンションの価格には、建物価格に設備更新による工事費が加算されている場合がある。相対的に価格の高いマンションほど、築年とのバランスを考える必要があるように思う。
終わりに
一度購入した住宅は一生付き合うことも多い。どのタイミングで購入するかは多くの人が迷うところであろう。
住宅の需要者は、ライフステージの変化や、生活環境の向上を動機に住宅を購入することが多く、需要者数は市況や制度の変化の影響を受けにくい。これに加えてコロナ禍により今の住宅へ不満が増し、住宅の購入を検討する人も増加するとみられる。
住宅は高額の買い物であるため、一時の勢いで決めずに、何度か見に行くなどの慎重さは当然に求められる。しかし、現在新築マンションの供給は限られ、中古マンションの供給が弾力的に増加する可能性も低い。気に入った物件があれば、購入を検討してもよいのではないかと思う。
[執筆者]
渡邊 布味子(わたなべ ふみこ)
ニッセイ基礎研究所
金融研究部 准主任研究員
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