2020年のマンション市場と今後の動向──コロナ禍で高まる需要、今マンションは買うべきなのか
また、森ビルの調査によると、コロナ収束後の出社率予想について、5割未満と答えた大企業は10%、5割以上8割未満と答えた大企業は33%、一方で100%と答えた企業は32%であった。仮に、週の半分以上の出社を求められるとすれば、通勤利便性はある程度重視する必要があるため、コロナ収束後も、都市部の通勤利便性の高い住宅は、引き続き相対的に高い競争力を保つと思われる。
現在のマンション供給戸数の動向
また、需要が潜在的に高まっていると見られる一方で、マンションの供給量は減少している。
図表4は新築マンションの発売戸数の12カ月の移動累計と、各月累計戸数の前年同月比である。供給量は、コロナ禍前の2019年から減少していたが、2020年以降のコロナ禍でモデルルームが閉鎖されるなど販売活動が制限されたため、さらに大きく減少した。
また、図表5は中古マンションの発売戸数の12カ月の移動累計と、各月累計戸数の前年同月比である。2020年に入っての減速に加えて、同年6月の緊急事態宣言のころからさらに減少した。
しかし、新築・中古マンションのいずれについても、発売戸数は2020年秋口ごろから戻してきている。これは、4-5月の緊急事態宣言で購入を先送りしていた層が購入したと考えられる。
尚、新築マンションについては、発売サイドが発売初月の売行きを見て発売を調整し、高い価格を維持している。売行きの好不調は、初月契約率70%がラインと言われているが、この基準で見ると、2010年から2014年の売行きは好調で、供給量も増加した。
しかし、2016年以降は初月契約率70%を下回る月が増えている。2017年4月から2019年5月までは、初月契約率60%半ば前後で推移していたが、供給量(12カ月移動累計)は前年比で±数%程度の増減であった。それ以降、初月契約率が落ち込むとともに発売戸数は大幅に減少した。供給量が減ったこともあり、2020年に入って初月契約率は一時的に70%を回復したものの、コロナ禍の影響もあり初月契約率は低下し、2020年12月の初月契約率は63%となっている。こうした状況では当面は価格維持のため、供給量を調整する動きは続くのではないだろうか(図表6)。
新築マンション供給戸数を実際の数値で確認すると、2020年は約2.7万戸と、10年前から4割、20年前より7割減少となっている。2020年半ばでの予想は2.1万戸程度1 であり、後半で大きく巻き返した点には着目したい。コロナ禍により販売活動は制限されたが、建築工事は外での作業のため密状態を気にせず、滞りなく竣工した物件が多い。不動産経済研究所の予測によると、2021年の新築マンションの供給戸数は3.2万戸で、2019年と同程度であり、コロナ禍前の状況まで回復する見込みである(図表7)。
次に中古マンションの成約件数を見てみると、長期的に漸増の傾向にある。中古マンションの場合はすでに居住者がおり、その人が売却するためには、別の住宅に住み替える必要があるため、売却は容易ではない。従って、多少価格が上がっても、新築マンションの供給量が減ったとしても、中古マンションの供給量が大きく増加することはないだろう(図表8)。
────────────────
1 渡邊布味子『2020年度前半までの新築マンション市場の動向-発売戸数は減少、価格は高止まり』 ニッセイ基礎研究所 不動産投資レポート、2020年10月30日