サウジ、外国からの投資誘致でドバイに挑む 熱き中東ビジネス拠点争奪戦
サウジアラビアが海外の人材や資金誘致を巡るアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイ首長国との「争奪戦」で、新たな一手を打ち出した。リヤドで撮影(2021年 ロイター/Ahmed Yosri)
サウジアラビアが海外の人材や資金誘致を巡るアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイ首長国との「争奪戦」で、新たな一手を打ち出した。ただ、ドバイはイスラム圏の中では外国人に比較的自由な生活を許している上に、中東の商業・金融サービスの中心としての地位をすでに確立しており、その牙城を崩そうというサウジの挑戦はハードルが高い。
サウジのジャドアーン財務相は、ロイターの取材に対し、中東地域の拠点をサウジ以外の国に置く外国企業や商業機関には、2024年から政府案件の契約を停止すると述べた。
イスラム教誕生の地でもあるサウジは宗教面で保守的だが、実質的な政治指導者であるムハンマド皇太子が主導する形で金融・観光業拠点への脱皮を目指しており、今回の規制もその政策の一環。
一方、近隣のペルシャ湾岸諸国に比べて石油資源に恵まれないドバイは、ビジネスに対してオープンな姿勢や、富裕な外国人向けに派手な生活を約束することで、自らの経済基盤を築き上げてきた。
米シンクタンク・新アメリカ安全保障センターの非常勤上級研究員、レイチェル・ジンバ氏は「UAE、特にドバイの経済モデルに対してサウジが挑もうという姿勢を強めているが、ドバイは経営や法律、施設などの環境が非常に優れており、企業はドバイからオフィスを動かさないのではないか」と話した。
それでも、アラブ諸国で最大の経済規模を誇り、世界最大の原油輸出国でもあるサウジがもたらす脅威について、UAEは深刻に受け止めている。
同国は外国人については離婚や同棲を認め、許可なく飲酒できるようにするなど、外国企業誘致策を導入済みで、その面で競争上有利だ。さらに元ドバイ財務長官のナセル・アルシェイク氏は、サウジ政府の動きは湾岸地域市場の統合という原則に反すると早速けん制球を投げ、ツイッターに「世界の経験と歴史は、無理な誘致は長続きしないことを示している」と投稿した。
一方、サウジのジャドアーン財務相は、ロイターに対し、ドバイとリヤドは互いに補い合う関係になるだろうと強調。「ドバイやアブダビ、他の都市がどうかではなく、サウジにはこの地域に置かれる企業本社のうち、正当な取り分を手に入れる権利がある」と訴えた。