バハマでデジタル通貨「サンドドル」始動 国家による全域導入に世界が注目
カンボジアのような小国も、独自のデジタル通貨プロジェクトを進めている。こうしたデジタル通貨は、特に発展途上国の世界では、銀行へのアクセスを現状阻まれている人々に金融サービスを提供する手段になると期待されている。
バハマの仕組みは、ユーザーへの普及から事業主側の高い決済手数料の回避といった面に至るまで、中銀デジタル通貨がどのように導入され、実際に機能し得るのかの手掛かりを与えてくれる。
ロンドンの中銀シンクタンク、公的通貨金融機関フォーラム(OMFIF)のフィリップ・ミドルトン副会長は「だれもが関心を抱いている。これは第一歩と言って差し支えないと思う」と語る。
「大国の主要中銀が学びを求めるのであれば、(バハマの事例こそ)総合的な教材と言える」
出だしは好調
サンドドルはこの10月に導入され、その後数週間かけて利用者が参加してきた。
約700の島や遠く離れた岩礁から成るバハマは現金の安全な輸送に課題を抱えるため、人々の金融サービスへのアクセス向上がサンドドルの主な目的の一つだ。決済も重要な分野となる。
NRGカフェのサンズさんは、この技術によって零細事業主はクレジットカード会社の手数料を回避できると説明。自身もオムレツやパニーニの商いで4%前後のクレジットカードやデビットカードの手数料を取られており、「零細企業にとって4%は非常に痛い」と話した。
サンドドル導入に際し、まず6つの送金・決済業者が認可を受けた。バハマ中銀はこうした業者のデジタル財布に対してサンドドルを発行する。そうした業者を介し、市民や事業主はアプリ経由でサンドドルにアクセスし、保有し、利用することができる。
中銀によると、商業銀行1行を含む他の3企業も現在、制度参入の審査を受けている。
中銀のデータによると、現在流通しているサンドドルは13万ドル相当で、従来の通貨であるバハマドルの5億0800万ドル相当の規模に比べるとわずかだが、出だしは好調だ。
バハマ中銀、ユーザー、技術を供与している金融機関3社への取材によると、サンドドルは今のところ決済手段として機能しているようだ。
送金業者オムニ・ファイナンシャル・グループのデアドレ・アンドリューズ氏は、商業主は顧客がサンドドルで買い物できるようにしたいと望み、あちこちで制度に参加し始めていると話した。
コロナ時代に安全
バハマの中銀デジタル通貨は、個人が中銀に直接口座を持つのを認めていない。中銀と個人が直接やり取りするようになれば、商業銀行から預金が流出し、そのビジネスモデルが揺るがされかねないからだ。このため、中銀デジタル通貨が伝統的な金融機関に及ぼす影響という点では、バハマの実験は手掛かりにはなりにくい。
バハマ中銀でサンドドル計画を統括するキムウッド・モット氏は、多くの事業主にとっては、コロナ禍中に現金の取り扱いを避けられるのがサンドドルの魅力の1つだと説明。「迅速で滞りもない上に、コロナの時代には安全だ」と語った。
(Tom Wilson記者)
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