ガンジス川に沈んだ廃プラ回収事業 年間目標450トンに対し成果1トンで幕切れ
インドのガンジス川から歩いてすぐの距離にあるバラナシ市の事務所は無人で、南京錠が掛かっている。事務所の外には「リニュー・オーシャンズ」と書かれた手押し車やゴミ収集用の金属網が無造作に置かれ、錆びるがままに放置されている。写真は事務所の前に置かれたゴミ収集用の容器。昨年12月撮影(2021年 ロイター/Saurabh Sharma)
インドのガンジス川から歩いてすぐの距離にあるバラナシ市の事務所は無人で、南京錠が掛かっている。事務所の外には「リニュー・オーシャンズ」と書かれた手押し車やゴミ収集用の金属網が無造作に置かれ、錆びるがままに放置されている。
それは世界最大手の石油・化学会社などが資金を出した廃プラスチックを回収する旗艦プロジェクトの成れの果ての姿だった。石化大手はこのプロジェクトについて、プランクトンからクジラまであらゆる海洋生物を殺し、常夏のビーチや珊瑚礁を埋め尽くす海洋廃プラによる危機を解消できると説明していた。
「リニュー・オーシャンズ」プロジェクトの打ち切りは報じられてこなかった。将来の業績がプラスチック生産の伸びと直結している石化業界は、生産拡大に伴う廃プラの増加を抑える目標を掲げてきたが、それが達成できていないことを示す事例だと2つの環境保護団体は解説する。
50社以上が資金を拠出
石化大手が2年前に設立した国際的な非営利団体「アライアンス・トゥ・エンド・プラスチック・ウェイスト(廃プラを無くす国際アライアンス、AEPW)」は2019年11月にウェブサイトで、リニュー・オーシャンズとの提携を世界で最も汚染のひどい河川に広げ、「最終的には海洋へのプラスチックの流入を止めることが可能だ」とぶち上げた。
エクソンモービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、ダウ、シェブロン・フィリップス・ケミカルなど50社以上の企業がAEPWとそのプロジェクトに5年間で総額15億ドルを拠出すると約束した。AEPWは実際に加盟社から集めた資金の額や全体の支出額を公表していない。
AEPWはロイターに対し、リニュー・オーシャンズが活動を停止したことを認めた。新型コロナウイルスで作業の一部が止まったことなどが理由だという。広報担当のジェシカ・リー氏は「当面は活動を再開するめどが立たず、他にも作業を行う上で支障があることから、AEPWとリニュー・オーシャンズは2020年10月に活動停止の相互合意を決定した」と話した。
「問題に対処する能力がない」
米法律事務所フルウィット・アンド・アソシエーツの法律顧問でリニュー・オーシャンズの代理人であるアン・ローゼンタール氏も同プロジェクトの打ち切りを見込んでいると述べた。「このプロジェクトにより廃プラ問題への取り組みで重要な進展があったが、リニュー・オーシャンズとしては、単純に言ってこの規模の問題に対処できるだけの作業能力がないとの結論に達した」と言う。