展望2021:活況のゲーム業界、「巣ごもり」後に試されるソニー・任天堂
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新型コロナウイルスの影響による「巣ごもり」需要で活況となったゲーム市場は、来年もその勢いが持続するかが試される。写真はゲームで遊ぶ男性。ロンドンで2018年6月撮影(2021年 ロイター/Tom Jacobs)
新型コロナウイルスの影響による「巣ごもり」需要で活況となったゲーム市場は、その勢いが持続するかが試される。コロナ禍が収束に向かう場合、ソニーや米マイクロソフトと、任天堂とではユーザー層の違いから、巣ごもりの反動の生じ方が異なるとの見方もある。足元では世界的な半導体需要の拡大で部品不足の懸念もくすぶり、今後の課題となりそうだ。
拡大続ける世界市場
「自宅で余暇を過ごすニーズが増え、家庭用ゲームの需要は相対的に上がった」と、ゲーム情報メディアのファミ通グループの林克彦代表は、2020年の市場環境を振り返る。
世界のゲーム市場は拡大傾向にある。オランダの調査会社Newzooの10月時点の推計によると、20年の家庭用ゲームのユーザーは前年比約1割増の8億人、市場規模は同約2割増の510億ドル。23年の市場は630億ドルに拡大すると予想している。
ゲーム機「スイッチ」の販売を伸ばした任天堂は21年3月期に純利益で前年比16%増の3000億円を予想。実現すれば「ニンテンドーDS」や「Wii」が好調だった09年3月期以来、過去最高を更新する。
20年の年末商戦には、ソニーが「プレイステーション5(PS5)」、米マイクロソフトが「XboxシリーズX/S」の新型ゲーム機をそれぞれ発売した。ソニーは販売台数で、先代の「PS4」の発売初年度実績である760万台以上を目指すと意気込み、ゲーム事業の営業利益は同25%増の3000億円を予想している。
巣ごもりの反動
もっとも、巣ごもり需要による追い風があった2020年との比較では、販売は圧迫されやすい。仮にコロナ禍が年央ごろに収束に向かった場合、影響が出やすいのはソニーやマイクロソフトだろうと、エース経済研究所の安田秀樹シニアアナリストは話す。
ソニーのPS5やマイクロソフトのXboxと、任天堂のスイッチとの大きな違いはユーザー層だ。PS5やXboxは、先端技術を盛り込んで、高速・高精細な描画を売りにする。ユーザーはもともとゲームに関心のある人が中心で、巣ごもり局面では、ゲーム機を持っていたユーザーのソフト追加購入やサブスクリプション(継続課金)加入が大きく寄与した。新型機は先代に比べてユーザー数がまだ少ない。21年は大型タイトルの端境期とも見られており、コロナ収束で余暇が減れば、巣ごもりで生じた需要が落ち着きかねないという。