展望2021:活況のゲーム業界、「巣ごもり」後に試されるソニー・任天堂
国内では、新型機の出足が先代に比べて鈍いとして先行きを懸念する声もある。ファミ通の調べによると、PS5の発売日11月12日から4日間の国内販売は約12万台で、PS4の発売から2日間の約32万台に及ばなかった。需要がないわけではない。ソーシャル・ネットワーク(SNS)などでは入手困難を嘆くユーザーの投稿が見られ、オークションサイトでは定価を上回る価格で取引されている。
流通が少ない背景についてファミ通の林氏は、市場の大きさに基づいて初期在庫の多くが米国に割り振られたと推測している。「先代のPS4は、北米で発売が先行し、数カ月遅かった日本での発売時には在庫が確保されていた」(林氏)。
出足の鈍さは、中長期的な国内の販売にも影響しかねないとエース経済研の安田氏は指摘する。新型ゲーム機は、発売直後にコアユーザーを多く獲得し、SNSなどでの口コミを通じて裾野が拡大するのが一般的な展開だという。ソニーはPS5の累計販売台数や国・地域別の販売台数は公表していない。
一方、任天堂のスイッチは、ゲームファンからファミリーまでユーザー層が幅広い。スイッチは発売から4年目ながら、ゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』の大ヒットでユーザーの裾野がさらに広がり、あつ森以降も『桃太郎電鉄』や『天穂のサクナヒメ』といったヒットが続いた。
ゲームの面白さに気づいたばかりの新規ユーザーは、新しく手に入れた娯楽となるゲームを、生活スタイルが元に戻ってもしばらく継続するだろうと、エース経済研の安田氏は話す。コロナによる開発の遅れで、発売時期が今年にずれ込んだ大型タイトルも控えているとみられ、「スイッチ本体が頭打ちになったとしても、新作ソフトの拡販効果で増益も可能」(安田氏)との見方もある。
部品不足の懸念くすぶる
一方、足元では、世界的な半導体不足の懸念がくすぶる。「個人消費や企業による設備投資のコロナ禍からの戻りが速い」(電子部品メーカー関係者)ことが主因とみられ、ゲーム機は第5世代(5G)通信網に対応したスマホなどと通信チップの奪い合いになる恐れがある。
現行のゲーム機はコントローラーなどの周辺機器がワイヤレス化され、通信チップは欠かせない部品となっている。エース経済研の安田氏は「最悪の場合、ゲーム機の生産が滞るリスクがある。部品の確保も課題になりそうだ」と指摘している。
(平田紀之 編集:久保信博)
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