緊急事態宣言拡大、経済損失1兆円 延長や全国拡大なれば「日本経済へ最後の一撃」
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政府は、緊急事態宣言の対象地域を11都府県に拡大させるが、1カ月程度の発令であれば経済損失は消費を中心に1兆円程度になりそうだ。写真は、都内の繁華街の大画面に映し出された緊急事態宣言の内容を説明する菅首相の会見の様子。2021年1月7日に撮影。(2021年 ロイター/Issei Kato)
政府は、緊急事態宣言の対象地域を11都府県に拡大させる。前回宣言時と比べ制限が緩く影響は国内需要の悪化に限定されるため、1カ月程度の発令であれば経済損失は消費を中心に1兆円程度と、昨年の宣言時より小幅にとどまると民間調査機関では試算している。ただ、1年にわたる経済活動の低下により雇用や企業の体力はすでに弱まっており、見かけの数字以上に影響は深刻なものとなる可能性がある。
経済損失は約1兆円、宣言解除されれば復調
基本的対処方針等諮問委員会は13日、緊急事態宣言の対象地域を首都圏1都3県に加えて大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、福岡、栃木県の11都府県に拡大する案を了承した。これら地域における消費は全国の約6割を占めており、外出自粛や外食需要の減少、サービス消費への影響は大きい。消費の停滞は、関連する設備投資の減少にもつながる。
ただ、今回は飲食店などへの短縮営業要請が夜間に絞られていることなどから、民間調査機関では緊急事態宣言を受けたことによる経済損失は約1兆円程度と、昨年の宣言時の1カ月でのおよそ3兆円程度(大和総研試算)よりはかなり小さくとどまると見込んでいる。急激に落ち込んでいた世界経済が、昨年に比べれば回復していることも支えだ。
緊急事態宣言がなかった場合と比べて、1カ月間の経済損失はSMBC日興証券の牧野潤一・チーフエコノミストが1兆円程度と試算、みずほ証券の小林俊介・チーフエコノミストも1.2兆円程度、大和総研の神田慶司・シニアエコノミストは1.3兆円度と見込む。
みずほ証券では従来1─3月期の成長率を前期比年率プラス0.5%と想定(昨年12月時点)していたが、緊急事態宣言を受けて同3.5%のマイナス成長に転じると試算し直した。
もっとも、緊急事態宣言が解除されれば「宣言前の水準に戻ろうとするため4─6月期には挽回し、その後は年末に向け緩やかに回復していく」(SMBC日興の牧野氏)と予想されている。