コロナ禍で自動車にもネット販売の波 日産は主力市場の米中で本腰
日産の取締役会に近い関係者によると、販売のオンライン化を進める主な狙いは、契約までに客がディーラーを訪れる回数を減らすことにある。平均数回のところ、1、2回まで減らしたいという。
北京市で体育教育のコンサルタントとして働くジャン・ウエイチェンさんは今年の夏、初めて自動車を購入した。彼が選んだのは日産のセダン「シルフィ」で、購入プロセスの最終段階までディーラーへ足を運ぶことはなかった。
ジャンさんが店舗へ行ったのは実物を確認し、最後の価格交渉をするため。それまでに友人のセルフィ―に試乗したり、日産がウェブサイト上で展開するバーチャルリアリティ(仮想現実)を体験するなどして研究を済ませていた。サイトから割引クーポンも取得した。
「すでにネットであらゆるものを買っている。それが今の生活スタイルだ」と、ジャンさんは言う。「次に車を買い換えるときもまたオンラインで買いたいと思う」。
ディーラーとの共存は可能か
ここで1つ疑問が浮かんでくる。ショールームに億円単位の資金を投じたディーラーが、ネット販売を脅威とみなす可能性はないのだろうか。
事情に詳しい関係者2人によると、7月下旬の取締会でグプタCOOはそうした質問を受けた。新しい販売モデルは店舗のディーラーと密接に連携したハイブリッド型であり、フランチャイズ加盟店を切り捨てたり、仕入れ価格と販売価格の差額であるマージンを引き下げるようなことはしないと、グプタ氏は答えたという。
さらにグプタ氏は、ディーラーは納車をし、メンテナンスと修理サービスも提供する必要があると述べ、そこが店舗を持たないテスラなど新興勢力に対する強みだと見ていたという。
ロイターが取材した複数のフランチャイズ店経営者によると、多くの日産ディーラーがネット販売の強化に異論を唱えていない。
「感染症が拡大する中で消費者はネットというチャンネルに依存しており、それはディーラーも同じだ」と、中国南部の広州市にある大型店の店長、イン・ユーフェンさんは言う。「賛成か反対か、我々が決める話ではない。圧倒的多数の顧客はネットで買いたがっている」。
ここ数カ月、日産車を売るインさんの店で購入した人の約3割はネット経由だったという。前年の約2割から増えたものの、インさんは脅威とは思っていない。 「販売価格の最終決定権は私たちにある。手数料やボーナスには影響しない」と語る。
複数の店舗を統括する大手ディーラーの幹部によると、今の環境下で日産車を売るのは簡単ではなく、ディーラーの多くはメーカーに販売プロセスの権限を移譲することに異論がなかった。
「稼げない今、ディーラーは日産から必要以上の在庫を引き受けたいとは思っていない」と、この幹部は説明する。「日産がさらに販売プロセスをコントロールしようが、修理や整備などのアフターケアの収入を保証してくれるなら気にしない」と話す。「日産よ、好きにネット販売をやればいい」──。
(白水徳彦※ 日本語記事作成:久保信博 編集:石田仁志)
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