コロナ禍で自動車にもネット販売の波 日産は主力市場の米中で本腰
直観に頼らないマーケティング
しかし、オンライン販売へのシフトは、慣れ親しんできた店舗販売戦略からの大きな転換であり、自動車業界にとって困難を伴う。ときに政治力を持ち、メーカーと深い関係を築いてきたフランチャイズのディーラーから強い反発を受けかねない。
新型コロナの感染拡大前から販売が落ち込み、苦戦していた日産にとっては、とりわけ大きな賭けとなる。日産はカルロス・ゴーン前会長の積極的な拡大路線で悪化した財務の立て直しを急ぎ、新車のラインアップが不足している。
関係者2人によると、日産経営陣は収益性の観点から販売のデジタル化を効果的だとみている。輸送費やマーケティング費など販売関連コストの無駄を削ぐとともに、データ収集力を向上できると考えている。
たとえば、今年夏に立ち上げた電気自動車「アリア」の特設ページ。世界で来年発売予定のこのスポーツ・ユーティリティ車(SUV)のウェブサイトには、開始から4日間で120万人が訪れた。関係者によると、訪問者が残した情報から、ラウンジのような室内空間とネットワーク接続サービスが、この車の最も人気の高い特徴であることが分かった。欧州で人気のボディカラーが、「暁(あかつき)」と日産が呼ぶ銅色と黒色のツートンであることも分かった。
また、欧州では56%が四輪駆動を、18%が二輪駆動を好み、残りはいずれも選択しない、あるいは回答をしなかった。米国では好みがほぼ拮抗した。
各地域の需要に合わせて部品やシステムをより正確に発注することができるようになったと、この関係者は説明する。「われわれのマーケティングは、直感に左右されにくくなっている」と、別の関係者は言う。「データに基づき、より正確なものになりつつある」。
最後の価格交渉で店舗へ
米デトロイトのコンサルティング会社アーバン・サイエンスで中国市場を担当するチーキャン・リム氏は、伝統的な自動車メーカーはオンライン販売で電気自動車メーカーに後れを取っていると指摘する。先頭を走るのは米テスラのほか、NIOやXpeng、WMといった中国勢だという。
伝統的なプレーヤーの中では日産、トヨタ自動車<7203.T>、ドイツのフォルクスワーゲンといった量産メーカーが中国で最も進んでおり、ネット販売の強化に向け具体的に取り組んでいると、リム氏は話す。「たとえばフォルクスワーゲンは、ディーラーに動画をライブ配信するやり方を教え、試乗しながら映像を流すこともある」。